人喰い石

144: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2005/10/24(月) 23:12:26 ID:o1HO0FDC0
同僚の話。
地元の山で行方不明者が出た。 
消防団に所属していた彼も、捜索に参加した。

同日の夕刻、残念ながら不明者は遺体で見つかった。 
人が入らぬ森の外れで、大きな石の上にうつ伏せとなっていたらしい。 
まるで石に抱きついてそのまま死んだように見えたという。 
別の分団よりその知らせが届くと、年長の先輩が顔を歪めた。 
「また人喰い石にやられたか」

どうやらその石は、地元ではそこそこ有名な代物のようだ。 
その近くで遭難した者は、大抵その大石に抱きついて亡くなっているのだと。 
それからしばらくは、石は人肌くらいに温かくなっていると聞く。 
死んだ人の体温を吸い取ったかのように。

だから人喰い石と呼ばれている。 
案内してくれよと話を振ったら、彼は顔を顰めて「行きたくネ」とだけ答えた。

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