人形

104: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2005/10/22(土) 18:14:08 ID:xs4Dqd1i0
知り合いの話。
彼の実家は山奥の神社である。 
神主職を継いではいないが、社の仕事はよく手伝っているそうだ。

秋祭りの際に神楽を奉納するのだが、その折に変わった仕事がある。 
祭りの前に人形を何体か購入し、舞台袖の見えない所に置いておくのだ。 
姿形は別に問わないが、手足が動く造りであることが大切であるらしい。 
祭りが終わった翌日、人形は魂抜きをしてから燃すのだそうだ。

なぜこんなことをするのか聞いてみると、御山から下りてきた神様が人形に 
入って、神楽などの祭り行事を楽しむからだという。 
だから人形に粗々がないよう、大事に扱うよう指示される。 
気をつける点としては、あまり上手い出来の人形は選ばないこと。 
神様が形を気に入ってしまうと、なかなか御山に帰ってくれないからだそうだ。 
角があってもいけないらしい。神様とは別のモノが入ることがあるからとか。

そう言えば、と彼はつぶやいた。 
俺、ガキの頃に社舞台で、小さな人影が踊っているのを見た記憶があるんだ。 
何かの見間違えだと思ってこれまで忘れていたけど、今人形の話をしていて 
思い出した。あれって神様が入っていたのかなぁ。

そうかもしれないなぁ。とりあえずそう返しておいた。

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