堕胎

184: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2006/03/15(水) 00:09:52 ID:EqZdSFzO0
堕胎させるために、妊婦を高所から突き落とす。 
同じ目的で、妊婦を水に漬ける。 
身勝手には違いないが、そうしなければ、多くの者が 
生き残れない土地が、あちこちにあった。
細い流れの滝が作り出した、小さな淵。 
黒っぽく光る水は、とんでもなく低温で、漬けた指先は 
いつまでも冷たいままだった。

「何人くらいかな・・・数えた奴もいないだろうな」 
そこら一帯の山について滅法詳しい男は、そんな言葉でしか 
その淵の歴史を語らなかった。 
彼の祖父は、母親の胎内にいる時に、この淵へ母親もろとも 
叩き込まれたのだ。 
幸い祖父は生まれ、そのおかげで彼も生まれた。 
その淵を通って、一人で山の奥へ入ると告げると、 
お前は、ここの人間じゃないもんな、とだけ言った。

来るはずのバスが来なかったり、知っているはずの山道が 
見つからなかったり、そんなこんなで、予定が狂ってしまった。 
通過するはずの、その淵にたどり着いたのは夕方だった。 
その日の宿営予定地までは、まだ2時間以上かかる。 
ここで寝るのは気色悪いが、諦めるしかなかった。

早く寝すぎたせいで、夜中に目が覚めてしまい、テントを出た。 
ヘッドランプは一瞬だけ光り、電球が切れた。

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