避難小屋

775: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2006/06/20(火) 23:58:45 ID:ayzDBR4P0
学生時代に泊まったことのある避難小屋に、一人で泊まった。 
ここへ来た全員が、また来たい場所だと言っていたのを 
妙に懐かしく思い出し、ほとんど無計画にやって来たのだ。 
簡単な食事を済ませ、翌日に備えてさっさと寝た。
交通事故で死んだ後輩の夢を見た。 
前に来たときは一緒だった男だ。 
夢の中、俺は住んだことのない街、住んだことのない 
アパートの一室に住んでいた。 
日差しは明るく、部屋全体が白く光っていた。 
その部屋に俺を訪ねて来ているのが、その男だった。

煙草を吸い、笑い、話をしたが、どんな話だったかは、 
残念なことに覚えていない。 
「じゃ、そろそろ行くんで」 
夢の中、彼は立ち上がった。 
「あいよ」という自分の返事で目が覚めた。

暗闇の中、小屋のドアが乾いた音を立てた。 
ドアを閉めた音だと、すぐ分かった。 
外へ出ると、満天の星空。 
乾いた空気の中、どこか遠くへ旅立つ、姿の見えない友人を、 
見るでもなく見送った。

彼が死んで三年。 
「ずいぶん、長居をしたもんだな」 
応える声は、なかった。

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