人化け

336 : 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ [sage] 投稿日:2011/04/25(月) 21:22:35.01 ID:4zKKwHzs0 [3/3回(PC)]

知り合いの話。
実家の裏山で一仕事終え、暮れなずむ道を叔父と下っていた。 
いつしか後ろから枯枝を踏みしだく音が聞こえてくる。 
背後を見やると、茶色っぽい人影が二人の後についてきていた。

叔父は手頃な石を拾い上げると、プッと唾を吹き付け、おもむろに投げつけた。 
命中したと見えた途端、パッと茶色の飛沫が周りに飛び散る。 
ばらけた中には何もいない。 
とその時、道のずっと先を走り去っていく獣が見えた。 
四つ足で細長い尻尾を振りながら必死で駆けていく。 
山に疎い彼には正体が皆目わからない。

あっという間に見えなくなった獣の正体を叔父に尋ねてみたが、 
「ありゃ獣っていうか人化けだ。まず関わるな」 
それだけしか教えてくれなかったという。

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