モコモコ

402 : 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ [sage] 投稿日:2011/04/30(土) 19:50:10.31 ID:/mYGPkSR0 [2/3回(PC)]
同僚の話。
山奥の湯治場へ泊まりに行った時のこと。 
シーズン外れだったこともあり、外湯の広い湯船が貸し切り状態だったそうだ。 
湯上がりの良い気分で渡り廊下を歩いていると、庭から這い上がってきた物がある。

真っ黒い、モコモコとした毛の塊。 
仔犬ほどの大きさで、手足は見えないがワサワサ蠢いている。

履いていたスリッパを手にし、恐る恐る突いてみた。 
クタッと中身が抜けたかのように、毛塊は平べったくなった。 
それ以上動くこともない。 
スリッパで毛を掻き分けてみたところ、中には何も入っていなかった。 
まるで理髪店の床上みたいに、黒い毛だけが散乱している。 
放っておくことにし、部屋へ戻った。

その湯治場を発つ前に、計三回その毛玉を目撃した。 
すべて無視したのだという。

前の話へ

次の話へ