兄弟船

468 : 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ [sage] 投稿日:2011/05/02(月) 19:33:05.06 ID:e0/8ql8f0 [3/4回(PC)]
先輩の話。
夜の山道を歩いていると、先方の暗闇から男性の歌声が聞こえてきた。 
誰かが良い気分で鼻歌を歌っているらしい。ほろ酔いな雰囲気が感じられた。 
演歌だ。知らない部分の歌詞を「ふふ~ん♪」で誤魔化しているのが微笑ましい。

やがてすれ違う。 
闇の中、歌声だけが、先輩の横を通り過ぎていった。 
歌い手の姿はどこにも見えない。 
演歌のサビはエンドレス、コブシを効かせながら山奥へと消えていった。

「でもよ、よりによって『兄弟船』を歌ってたんだぜ。 
 山で歌うのに船は無いだろうが、マッタク」

先輩、貴方ズレてます。 
そう思いはしたが、決して口には出さない私だった。

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