窓ガラス

13 : はりつけ1/3[sage] 投稿日:03/05/02 03:29
このスレ見てると、幽霊ってやっぱり普通はおとなしいものだよね。 
でも以前僕が対面した奴はあんまりおとなしそうじゃなかったなあ。 

大学生の頃、あまり大きくもない地方都市の郊外にあるアパートの2階を借りていた。 
窓の外側は小学校へ向かう通学路があり、その向こうは林だった。 
夜に窓の外を見ると、林に遮られて家々の明かりが全く見えなかったものだ。 

ある春の夜、僕はその部屋で一人マンガを読んでいた。 
4月にしては肌寒い夜で、窓の外は強い風が吹いていて、 
向かいの林の木々が風鳴りしているのが部屋の中にいても聞こえるくらいだった。 
閉じたカーテンの向こうで、窓ガラスが時々カン、カンと鳴ってるのも聞こえた。 
風で外に掛けっぱなしのハンガーがガラスに当たってるのだろうと、 
その時はなんとなく思っていた。

僕はマンガに夢中で、気が付くと夜中の3時を回っていた。 
「あとちょっと読んだら寝るか」 
そう思って再びマンガに目を落とした。すると突然、部屋の蛍光灯がチカチカ点滅しだした。 
「マジかよ~、玉切れか~?」 
こんな時間にコンビニに行くのも面倒くさいので、マンガが読めなくなった僕はもう寝ようと決めた。 
布団を敷いていると、点滅していた蛍光灯がいよいよ完全に消えてしまった。 
もう寝るんだし、月明かりがカーテンの隙間からうっすらと差し込んで 
かすかに見えるので(その部屋は雨戸が無かった)まあいいや、と僕はそのまま布団に入った。 
相変わらず窓はカンカン鳴っていた。 

目を閉じて余計に音に対して敏感になったからか、ふと気づいた。 
さっきから窓のカン、カンという音の合間にカリ、カリ、という音がする。 
まるでガラスを爪で引っかいているような音だ。 
目を閉じたままじっと聞いていると、カリカリという音が次第に大きくなってくる。 
ガリガリ、ガリガリという様に。 
ちょっと怖くなった僕は、早く寝ようと強く布団にくるまってひたすらじっとしていた。 
そのうち、奇妙な音はギー、ギーという、 
まるで金属でガラスを引っかいているような音に変わってきた。 

さすがに僕は眠れなくなった。 
音の正体を見ようと、立ち上がって窓に近づいていった。 
その時はなぜか音の正体を想像したりしなかったなあ。 
だから恐怖心を抑えられたんだと思う。 
僕はカーテンに手を掛け、さっと引いた。

そこには何と、窓ガラスに押し付けられた女の顔と両の手のひらが! 
その顔はきつい感じの痩せたおばさん、という感じの顔だった。 
肌はおしろいを塗ったように真っ白で、口を大きく開け、笑ってるようにも見えた。 
なぜか体は無く(見えず?)顔と両手のひらだけがガラスにぴったりと押し付けられていた。 
つまり左の頬をガラスに押し付けた状態で半笑いのまま僕を横目で見ていたのだ! 
僕はしこたまびっくりして「わわわっ!」と情けない低い声をあげ、 
一目散に布団の中に潜り込んだ。 
ガタガタ震えながら朝を待ってるうちに、いつのまにか眠ってしまった。 
翌日の昼頃目が覚めた僕は恐る恐るカーテンが開きっぱなしの窓の方を見た。 
もうそこには女の顔も手のひらも無かった。 
それからもしばらくそのアパートに住んでいたが、奇妙な出来事はこれっきりだった。 

あの顔は僕を驚かそうとガラスを引っかいたんでしょうか。 
そう考えると幽霊ではなく妖怪のたぐいだったのかも知れません。 
あれから年月が経ち、だんだん記憶も曖昧になってきて、 
今考えると夢だったのかな?と思う時もあります。 
ただ、あの出来事のあった翌日に顔と手のひらのあったあたりのガラスをよーく見てみると… 

後はご想像におまかせします。

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