マガツジ

532 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2013/04/08(月) 19:01:56.63 ID:HmoRQwfq0
知り合いの話。 

彼の住んでいる集落の山には、細くて長い農道があるのだという。 
そこを歩いていると、よく自分を失うらしい。 
心ここにあらずといった感じになり、道の上にただ呆然と立ち竦んでしまう。 
鳥の声などでハッと我に返ると、軽く数時間が経過しているのだとか。 
その道は、地元では『マガツジ』と呼ばれているそうで、一人でいる場合は通らない方がよいとされているそうだ。 
「俺、そこは何度も軽トラで通ってるけど、変な体験をしたことはないよ。 
 というか皆が言うには、車とかに乗っていると大丈夫らしい。 
 いや、用もないのに、わざわざ歩いて通ろうとは思わないな。 
 だってそんな体験しちゃったら、何か嫌じゃないか」 
そう言って、彼は肩を竦めていた。 

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