バードウォッチング

825 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2013/04/22(月) 19:40:12.89 ID:TEN/rORq0
私の体験した話。 

大学生の頃、バードウォッチングに参加するため、早朝の山へ出掛けた。 
野鳥に詳しい連れが一人いて、色々と教えてくれるのがありがたかった。 
彼は集音マイクを持ち出して、野鳥の声を録音してもいた。 
「後で編集して、スカウトの子たちに聞かせるんだ」
そう笑っていた。 

そのしばらく後、皆が久しぶりに学食で顔を合わせた時のことだ。 
「この間の鳥の声、纏めたのなら俺たちにも聞かせてよ」と話し掛けると、 
「ああ、あん時のテープは廃棄しちゃったよ」という答えが返ってきた。 
怪訝そうな顔の私たちに、彼は顰め面で説明した。 
「テープに録音されていたの、鳥の声だけじゃなかったんだわ」 
「あ、悪ぃ。ひょっとして俺らの声も入っちゃってた?」 
「いや君ら誰も、悲鳴やら苦鳴やら上げてなかったろ」 
「……何が録音されていたんだよ?」 
しかしそれ以上の説明はなく、テープの話題はそこで打ち切りになった。

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