生き霊の正体

1630 :名無しさん:2012/07/10(火) 02:53:15 ID:XtZB4JAk0
長くなりますが、今年起こったこと。分けて投稿します。

ある日、婚約中の彼女ゆか(以下、人名は仮名です)とオープンカフェで軽い食事をしていたら、
偶然ゆかの友人・ハルさんがやってきた。初対面だったんだが、ハルさんは少し難しい表情で俺を見ていた。
もしかしてあんまり印象よく思われてない・・?
俺は努めて明るく自己紹介をした。ハルさんも好意的に自己紹介をしてくれたものの、
やっぱり表情は固い。

ハルさんは誰かと待ち合わせしてるらしく、 
それまで俺たちと話しをすることになった。そのうちゆかもハルさんの固い表情に気付いたのか、
俺君は意外と面白いんだよ!とか色々困るフォローをしてくれたんだが
「ちょっと気になる事があるんです」とハルさんは申し訳なさそうに言った。

ただその後の言葉を言うか言わないか迷ったようだが、俺もゆかも大丈夫だよと後押しするとようやく
その「気になる事」を話してくれた。

「俺さん、何か困ってる事ありませんか?たとえば
家で変な事が起きるとか・・体調があまりよくない状態が続くとか」
「?いや、特に何もないですね」

ただ少し気になる事があった。ゆかだ。け
おっとりしてるせいなのか否か
ゆかはよく怪我をする。明らかに何もないところで転んだり、本人も気付かないうちに身体に青アザが出来ていたり

普段ゆかが乗る自転車はしょっちゅう故障する。
たまに利用する電車やバスも遅れたり何らかのアクシデントがあったり・・ 

大事故や大きな不幸はないものの、俺と付き合い始めた頃からゆかはそんな「小さな不幸」に付きまとわれている。

本人は全く気にしてはないが、
俺にとってはこれから妻になる大切な人。その事をハルさんに告げた。
ハルさんはどこか悲しそうな表情をした。
「信じるか信じないかは任せます・・・でも信じてほしいです。
俺さんに、悪いものが憑いてます」

実は今まで何回か同じ事を言われたけれど俺自身、怖い体験をしたことがないし気にしてこなかった。
怪談話しや不思議な話しは好きだけど・・
ハルさんには申し訳ないが、
正直この時も半信半疑だった。

「多分、生きてる人、かもしれないです。
そうだ、実は今日は妹のナツと待ち合わせしてるんです、妹の方が私より見えますから」

ハルさんの妹、ナツさんが来るまで二人は、
ハルさんとナツさんの周りで起きた不思議な体験とか色々話してくれた(長くなるため割愛)

ハルさん曰く、私はうっすら感じ取るだけ
妹は第六感が働き、そして五感全てで感じ取る人。
つまり霊感が強いらしい。

数十分後ナツさんがやってきた。
ハルさんが声をかけ、ナツさんが俺たちの方を見た瞬間
すぐギョッとした表情をした。

その表情を見て俺は確信せざるを得なかった。
もし三人が口裏をあわせるにしても、ゆかもハルさんも全く携帯をいじってなかったし、
ましてやこの日のデートは俺がその日に誘い、その時いたオープンカフェもたまたま通り掛かり、お腹が空いていたから入ったんだ。 

間もなくナツさんが席につき、ハルさんがナツさんに事情を説明。
俺が落ち込んでると思ったのか、ゆかはずっと手を握っていていくれて
思わぬ行動だったけど内心嬉しかったし心強かった。

「俺さんにいます。顔のすぐ横で私たちを警戒してる。
その霊、というか生き霊。俺さん、今まで本当に何も・・?」
「何もないよ、むしろ元気すぎて困ってるくらいだし・・俺よりゆかが心配で」
「俺さんの生き霊は、俺さんに親しい人に対して悪い事をするみたい。
ゆかさんにこれまで大きな不幸がなかったのはゆかさん自身、心が強いおかげもあるけど
強いご先祖さんが守護してくれてる。不思議な人だよ、
ゆかさんだけじゃなくゆかさんの家族も守ってるみたい。
多分、生前人を守ることに力を入れてたのかも」
「ねぇナツちゃん、俺くんにはどんな人が憑いてるの?
俺くんは恨まれるようなことする人じゃないよ」
「生き霊って悪いイメージが強いけど、良い生き霊もたまにいて。
例えば純粋な愛情で相手を思ってたりとか・・
だけど、俺さんには、その」
ナツさんは暫く黙った後、重い口を開いた。どうやらハルさんも自分が感じ取ったモノに確信を得たみたいだ。

「俺さんには、俺さん自身が憑いてます。
憎しみとか怒り・・ずっと怖い顔をしてる。目の前にいる俺さんからは想像できないくらい」

それを言われた瞬間すぐ納得した。
確かに俺は俺自身を憎んでいる。

幼少の時に母は病死、10代になった頃、父は訳あって自殺。
何もできない自分が許せないと思ったのはこの時からだ。
間違いなくそれがきっかけだった。 

中学生に上がる前、父方の祖父母に引き取られたものの
祖父母や親戚は性格が汚い人達で、何かにつけて父と母の保険金を要求するくせに
俺に対しては冷たかった。今思えば虐待的な事もされた。

「お前が悪いんだよ、お前が」こんな言葉を毎日言われた。
もちろん親族に対しても強い怨みはあったが、
何より自分自身に劣等感というか
自身を許せない気持ちの方が上回った。

母さんが早く病院に行かなかったのは俺がいたから。
母さんがいなくなってから、父さんにはたくさん苦労をかけてしまった。
俺がもっと世渡り上手で頭が良かったら、親族が俺を見る目も違ったかもしれない。

今思えば、親しい友人にも不幸が多かった・・
友人達の環境が心底、羨ましく思ったせいかもしれない。
家族がいること、帰る家があること、俺みたいな経験をしてない事、汚い感情を知らない事、
おそらくこの先も健やかなままだろう、未来の友人達さえも。

理不尽なのはもちろん理解してる・・だけど憎い。
理不尽な自分自身が一番憎い。

自分の身の上話しは決して明るいものではないし、反応にも困るだろうから
これまで誰にも、ゆかにさえ詳しく話した事がなかった。

正直に話した。
三人とも泣きながら黙って聞いてくれて、本音を言うと少しだけ救われた気がした。 

「ねぇ、私の守護霊に俺くんも家族だから守ってほしいってお願いしちゃだめかな?
お祓いも、でも俺くん自身だから難しいかな」
「正直、ゆかさんを守っている人からすれば俺さんを好意的には・・難しいと思う。
お祓いも・・どうかな。状況を良くするアドバイスは出来ても、
私とハルにはお祓いする力はないんだ・・ごめんなさい」
「私からも・・辛い思いをさせてしまってごめんなさい。お祓いしてくれるところ、急いで探します。
関わったからには私達に責任がありますから」

二人共、今日が初対面なのに本当に親身になって俺に接してくれた。

「俺さん、生き霊は気が済んだら身体に戻る場合も、そのまま消える場合もあるんです。
生き霊も『生きてる』からエネルギーが必要で、特に思いが強ければ強いほど・・
お祓いしてくる人が見付かるまで、何か良い改善策がないか考えます。
俺さん自身は優しい人なの分かります。

その日はその場で解散することにした。ゆかとは半同棲だったけど、 
危ないから暫くは自分の家にいてほしいとお願いし、自分の家に帰ってもらった。

それから俺はゆかと接するのは避け、早急にアパートを引き払い
現在のアパートに引っ越した。
ゆかや友人達、勿論ナツさんやハルさんとも連絡してない。

離れなきゃいけないと言う気持ちがあった。
それが俺自身の考えか、もう一人の自分の考えなのかは分からないが。

なるべく人と親しくならないようにしてる。
Twitterやブログも、誰かに影響しそうでやったことはない。

だから2chもROMか、どうでも良いことレスするだけ。

とにかく親しくしなければ大丈夫・・だと思う。多分。

俺自身に積もり積もった俺自身の怒り、怨み、憎しみは今もある。
本当は誰かと親しくしたい。救われたい。
けどどうすればいい分からない。

本当に自分が憎くて仕方ない 

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