ベル端末

287 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/06/22 22:59 ID:VHPgLX0g
祖父が亡くなったのは昨年の春。 
その後、遺品の整理で祖父の家に泊まりこんだ叔母は、不思議な体験をしている。 
祖父の衣類で形見分けできそうなものを、たたんで袋に入れていた。クリーニングに出すためだ、そして、 
「この時間なら、まだクリーニング屋さんやってるわよね。行ってこよっと」 
と、叔母は袋と財布を持って玄関へ急いだ。その時だった。 
  
 ぴぃん・ぽおおおおお~ん♪ 

玄関のドアに手をかけた瞬間、ベルが鳴った。玄関のベルじゃない (玄関は ぶ・ぶ~っ の、ブザー)。 
・・・その音は・・・自分の抱えた袋からだ。 
はっとした叔母が袋に手を突っ込むと、無意識に自分が入れたのだろうか? 祖父のベル端末が出て来た。 
病気で体の動かなかった祖父は、枕元にベル本体を置いていた。 
祖父が本体ボタンを押すと、他の部屋に設置したベル端末のほうがぴんぽーん♪と音を鳴らす。 
家族が祖父の部屋へ行き、「おじいちゃん何か用事?」「おう。水飲みたいから持って来て」・・・なんて寸法だったのだ。 

その時、袋の中から出て来たのは端末のほう。 
一瞬の後、靴を脱いだ叔母は祖父の部屋へ猛ダッシュで引き返した。 
「お、おとうさんっ?」 
叫んでドアを開けた。が・・・もちろん、そこに祖父本人はいない。祖父のベッドの脇に、ベル本体だけが置いてある。 
嘘じゃないのよ、本当に鳴ったのよ・・・と、後日、叔母は真剣な目で語っていた。 

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