楽しみましょうよ

289 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/03/23 14:04
5年ほど前の冬。
寒い夜で、俺は掛け布団2枚と毛布をかけて寝ていた。
深夜、ふと気付くと掛け布団が足元の方へすーーーーーっと、
引き剥がされていく気配が。
1枚目が剥がされると、続いて2枚目もすーーーーーっと剥がされていく。
毛布1枚になり、冷気が身にしみて俺はガクガク震えた。

さらに、毛布までも音もなくめくられていく。
何だ? 何が起こったんだ!?
すべての寝具を引き剥がされた、次の瞬間。

ばっっ! という感じで何者かの手が伸びてきて、俺のパジャマのズボンにかかった。
脱がそうとしている!
俺は必死でズボンとパンツを押さえ、何者かの手首をぐっと掴んだ。
確かに掴んだ感触があった。ほんのりと体温さえ感じた。
すると、何かが俺の身体の横に倒れ込んでくる気配がした。
俺の顔のすぐ近くに、何者かの息づかいを感じた。
そして、媚びを含んだ女の声が。
「いいじゃない。楽しみましょうよ」

はっとした。
俺は夢中で目を開いた。
・・・誰もいない。
確かに手首を掴んだはずの俺の右手は、何もない中空を握っていた。
握った手のひらには、ついさっきまで何者かの手首を掴んでいた感触が
生々しく残っていた。

気が付けば、布団さえ剥がれていない。
眠った時と同じく、俺は布団の中にいた。
・・・夢だったのか?
そう思い、苦笑がこみ上げてくる。しかし・・・。
身体が動かない。
俺はいわゆる金縛り状態だった。
かろうじて目だけは動く。
俺は掛け布団の上に目をやった。

何かが、動いている・・・!!
正確には、動いているモノ自体は見えない。
だが、布団の表面の皺が、何か柔らかいものでなぞられているように、
すーーーーーっ、すーーーーーっ、と動いている。
見えない箒で掃いているように・・・いや。
目には見えない女の長い髪が、布団の表面にこすれているように。

しばらくして、布団の上の動きは収まった。
金縛りも解け、俺はがばっと布団からはね起きた。

あれは一体何だったのか?
少なくとも、女の声を聞いて目を開けた次の瞬間からは、確実に目が覚めていた。
掴んだはずの手首の感触も生々しく覚えている。
よくある幽霊話のようなひんやりした手触りではなく、
確かに体温のぬくもりが感じられたことも・・・。

オチも、後日談も何もない。
ただ・・・「楽しみましょうよ」と誘われた時、ほんの一瞬だが
その気になりかけたことだけは告白しておこう。

長文スマソ。

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