サル

573 名前:もこ :04/02/12 20:46
草むらにゴミのように捨てられたもこが、静かに走馬灯を回し始めていると、
通りがかった車の窓から、お友達のさっちゃんがひょっこりと顔を出しました。
「パパが山へドライブに連れて行ってくれるんだけど、一緒に行かない?」
運転席を見ると、さっちゃんのパパがもこに向かって軽く手を挙げました。

さっちゃんのパパは、外国へ行く大きな船を指揮するカッコイイ船長さん、を、
嫉妬に狂うギラギラした目で見上げながら、船の甲板をブラシでこすり続ける船員さんです。
もう200人くらい殺しているんじゃないかという噂があり、
目を合わせるだけで、首にロープのようなもので絞めた跡を付けられてしまいそうな、
そんな危険な香り漂う男性です。

「うん、行くー。」
もこが車に駆け寄り、乱暴にマジックで消された下に「田中個人タクシー」の文字がうっすら透けるドアを開けると、
後ろの座席が赤黒い大きな染みで汚れていました。
「おじさん、すごい染みがついてるよ?」
「ああ、前の持ち主の血糊がとれないんだ。」
どうやら田中さんの血のようです。

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