おばあちゃんと人形

449 本当にあった怖い名無し sage 2012/04/02(月) 21:27:07.10 ID:8zeuAHlJ0
桜がキレイな季節になりましたね。 
この時期になると、大学の入学式の日のことを思い出します。 
私は進学校から、そこそこの地方国立大学に入学しました。 
憧れのキャンパスライフ。期待が膨らみます。 
朝、一人暮らしするために借りたアパートから出て、大学へと向かいました。 
大学までは歩いて五分ほどの距離です。 
その道の途中に、大きな交差点がありました。 
歩行者信号が赤だったので、私はとりあえず青になるのを待っていました。 
向いの歩行者道路には、老人夫婦が信号をまっているのが見えてました。 
その老人夫婦、なんだか見覚えがあります。 
二人ともキレイな白髪です。 
おじいさんは、その髪を後ろで短く結び、白い立派な髭を生やしていました。 
おばあさんは、年のわりににはキレイな髪をさげ、ロングヘヤーにしています。 
しかし、思い出すことができません。 
遠い、遠い記憶の中に沈んでいる・・・。 

信号が青になりました。 
横断歩道から足を進めます。 
すると、その老夫婦がすれ違いざま、二人とも私のほうを向いて 
「まさみ」 
と呟きました。二人とも同じ声で。 
しかも、聞き覚えのある声です。 
わたしは二人のほうを振り返りましたが、そこにはもう誰もいません。 
しかし恐怖は感じません。 
あの声は、幼少のときに死んだおばあちゃんの声でした。 

おばあちゃんの趣味は、人形を集めることでした。 
西洋の人形から、日本人形まで、さまざまな人形がおばあちゃんの部屋に飾られていました。 
その中で、不気味な人形がありました。 
熊手をもった、キレイな装束をきた、おじいさんとおばあさんの人形です。 
しかも、顔のつくりが奇妙でした。 
顔面がお面のようになっていました。 
お面の表情は笑っていますが、まるで般若の面のような禍々しさがあります。 
私はその人形が嫌いでした。 
おばあちゃんにこのことを話すと、 
「こう見えて、この二人はまさみを守ってくれるのよ。」 
と言いました。 
今までのイメージが一転して、なんだかこの二つの人形が一生私の味方であるような気がして、心強く感じました。 

おばあちゃんが生きている間は、おばあちゃんの部屋は私にとって楽しい遊び場でした。 
しかし、おばあちゃんが死んでからは、不気味な雰囲気が漂いはじめました。 
見かねた私の母は、その人形たちを供養寺にあずけてしまいました。 

あの時、おばあちゃんは人形の体を借りて、私に会いにきてくれたのでしょう。 
おばあちゃんが今でも見てくれている。 
そう思って、いままで頑張ることができました。 
ありがとう、おばあちゃん 

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