空き屋の窓の中

658 名前:1/2 :03/05/14 17:31
もう8年くらい前の夏休みの話。 

夏休みと言っても朝から晩まで部活動の毎日。 
そんな夏休みも半ばにさしかかった頃、僕達の住む北の大地はちょうどお盆で、 
帰省してた部活のOBが車で遊びに来ていた。 

毎日の練習に飽き飽きしていた僕達が 
そのOBに「どっか遊びに連れてけ!」とせがんだ結果、 
じゃあ肝試しにでも……ということで地元でも有名な心霊スポットに行くことになった。 
出発は夕方。部活内で参加者を募るものの、集まったのは結局3人だけだった。 

肝試しに行った先は一軒の空き屋で遠くから見た感じではただの家に見えた。 
ただ、家の周りには2Mくらいの柵で囲まれていて、近くでみると相当広い敷地だった。 
まずOBが、次ぎにG君が、更にO君が続き最後に僕が柵の中へと入る。 

だんだん日も暮れかけ薄暗かったのでOBが持参した懐中電灯を手に進んだ。 
荒れ果てた敷地内にさほど痛んでもいない家。 
なんとなーく不気味さはあるものの幽霊が出てくるわけでもなく「つまんないねー」とかいいながら歩いていた。 
暫く家の周りをぐるぐる歩いていると虫の羽音が耳元を掠めた。 
蚊じゃなくて、蝿とか蜂のようなブンブンという音。 
微かだったけど、僕はこの音が嫌いで何度も払おうと頭を振っていた。 

前を見るとG君もO君も似たような仕草をしている。 
「虫、いるなぁ~」とOBが言い、みんなで「ウゼーウゼー」とか言いながら歩いた。 
でも払っても払ってもブーンブーンという音は消えない。 
それどころか、だんだんその音は大きくなってきてるようだった。 

ふと、G君の歩みが止まった。 

「なんか…虫じゃなくね?」 
そんなG君の言葉に全員が立ち止まり耳を澄ましてみる。 
よくよく聞いてみると、その音はお経だった。 

まずOBがギャー!と叫び、それに続いて全員が叫びながら柵の方へ走った。 
夢中で走ってとにかく早くここから出たかった。 
けど、他の3人が次々と柵越えする中、僕は家の方を振り返って見てしまった。 

空き屋であるはずの家。 
なのに、窓からは明かりが漏れていた。 
僕は柵を越えることも忘れてしまう程にその家の窓から目が離せなくなっていた。 

だって窓の中、つまり家の中には 
僕達4人が麻雀をする姿があったから。 

G君の叫び声で我に返り柵を越え、もう一度家の方を見た時にはすでに何も見えなかった。 
明かりも消えていて元の空き屋に戻っていた。 


この話は同行した3人は信じてくれなかったし(3人は見ていなかった)、 
それ以前に僕達4人で麻雀なんかしたことがなかったから何を意味するのかはいまだにサッパリ分からない。 

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