荒らし駄目絶対!

422 名前:ひとおつ 投稿日:02/04/28 06:59
少年がいた。 
いや、もう少年と呼べる年頃では… 
人より秀でている所も無く、いなくとも誰にも気にかけてもらえない、そんな彼。 
彼の唯一の慰めはインターネット。 
それも人の掲示板に匿名で乱入しては、誹謗・中傷を繰り返す、所謂「荒らし」と言われる行為。 
相手を罵倒する事で、普段誰にも気にかけてもらえない自分が、何となく大人物になったような…それが彼の心の糧だった。 

ある晩。 
いつものように、ある掲示板を覗く。 
彼の書き込みに対して、憤怒の声があがっているのを確認して、ほくそえむ。 
そして、次の書き込みを終えた時、 
(ひとおつ…うふふふふふ) 
彼は思わず後ろを振り向いた。 

誰もいるわけがない。 
今この家には母親と自分の二人きり。 
空耳だ。当たり前じゃないか。 
ちょっと額の汗を拭き、次の書き込みをする。 
(ふたあつ・・・きゃははは) 
その幼い声に彼はびくんと立ち上がった。 
そうっと辺りを見回す。 
子供?思わず時刻を確認する。午前3時33分。 
子供がこんな時間に起きているわけが・・・ 
しかし、一応部屋の外も確認する。何も無い。疲れているのかな? 
今日はもう寝ることにしようかな・・・そう思い、彼はPCを終了させた。 

次の日、おそるおそるPCを立ち上げる彼。 
ちょっといつもより軽めの中傷を書き込む。 
・・・何も起こらない。 
彼はくすくす笑った。馬鹿らしい。 
そうだよな、そんな事あるわけない。 
彼は猛烈な勢いで、次の書き込みを始めた・・・ 

数週間後、彼は体にそこはかとない変調を覚えた。 
しかし、なんとは無しに日々を過ごしていた。 
それから更に数ヵ月後、母親が彼に言った。 
「お前、最近ほくろが増えてないかい?」 

検査の結果、彼は末期の皮膚癌で、間もなく昏睡状態に陥った。 
医者も首を捻ったのは、転移の仕方だった。 
「最初は内臓に癌が発生したのは間違いないのですが、 
何故癌細胞があちこちに点在しているのでしょうね・・・まるで 
子供がでたらめに印をつけたように・・・」 

今、誰も感じる事の出来ない彼の意識の中では、 
「アハハハハ・・・ななぁつ」「うふふふふ・・・じゅうにぃ」と 
子供の数え歌が途切れることなく続いている・・・

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