70歳の女性に - ヒカリゴケ片山裕介
後輩に●●という芸人がいるんですけど、そいつは21で若いんですがやたらと熟女受けするんですよ。
過去にもバイト先で知り合った五十代の人に告白されてたりもするんです。
そいつが喫茶店でバイトしている時に常連の七十代くらいの人に「彼女は居るの?」と聞かれたそうです。
「いないです」と答えるとそのお婆さんは机においてあった箸袋にさらさらっと自分の電話番号を書いて「日曜日に電話してきて」って言ったそうです。
そいつは興味本位もあって日曜日に電話をかけたんです。
そしたら男の人が出たので
「あ、すみません。●●というものです。
先日こういったことがあってお電話しました。
お婆さんはいらっしゃいますか?」
そしたらその電話口の男が「またですか」と言うんです。
「え、どういうことですか?」
「それはうちの母なんです。
母は若い子が好きで、可愛いなと思うとすぐに電話番号を渡しちゃうんです。
本当に申し訳ないです」
「いえいえ、気にしていません」
「お詫びしたいので家まで来てもらえませんか?」
「いや、気にしていないのでそんなの大丈夫ですよ」
「いやいや、直接お会いしてお詫びしたいので家まで来てくれませんか」
「じゃあ分かりました」
そう言って指定された駅まで行くと、駅前に明らかに高級車で黒光りした車が停まっているんです。
そして後輩はその車に乗って家まで連れて行かれたんです。
家まで行くとそれは豪邸で、中に通されるとお婆さんがいつもバイト先に来るような格好ではなく、とてもきれいな格好で座っているんです。
そこで後輩は(あ、このお婆さんはとてもお金持ちだな)と分かったんですね。
そしたら息子さんが出てきて
「母がご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません」
と謝るんです。
そして封筒を差し出して
「これ、迷惑料として受け取ってください」
と、多分お金でしょうね、封筒を差し出すんです。
中を見ると、中には十万円が入っていたので後輩は「いやそんなつもりで来ていないですから」と返そうとしたんですね。
「いや、これは本当に迷惑料なので受け取ってもらわないと困ります。
今日は立会人も来ているんです」
そしたら襖が開いて、ビシっとスーツを着たいかつい男の人が入ってきたんです。
それを見た瞬間に後輩は(あ、これ以上断ってもまずいのかな)と思い、封筒を受け取ることにしたんです。
そうしたら息子さんが立会人の方を連れて一度部屋を出たんです。
そしたらお婆さんが
「ごめんなさいね。
本当に私変な意味じゃなくてあなたのことを可愛らしいなと思って電話番号を渡しただけなの。
本当に変な意味じゃないから誤解しないでほしい」
「分かっています」
「最後に肩をもんでくれない?」
後輩は断るのも怖いので黙って肩をもむことにして、お婆さんの肩をもんでいたんです。
黙ってもんでいたらお婆さんがそいつの右腕を掴んで胸元に差し込んだんです。
後輩は急いで手を引いて、でも声を出したらまた男の人達が来ると思い急いで家を飛び出したんです。
後輩は家から飛び出し、すぐに来たタクシーに飛び乗って
「駅まで行ってください」
「お客さん、何かあったんですか?
今あそこの家から出てきたでしょう。
あそこに家ね、たまにこんな風に若い人が飛び出してくるんですよ」
「よく分からないんで駅まで行ってください」
それまで駅までついて降りようとすると運転手さんがこうやって言うんです。
「お客さん良かったですよ。
私、駅まで行ってくれって言うから駅まできましたけど、警察に行ってくれって言うとあの家に戻らないといけなかったんですよ」
そのタクシーの運転手さんもその家の人と知り合いだったってことですよね。