エヴァンゲリオンが現実に起こした奇跡 - 中田敦彦

エヴァンゲリオンが何故ヒットしたのかという、理由に迫りたいと思います。
今回は一般的に知られていない、二つの理由をお話したいと思います。

じゃあひとつ目はというと、ストーリーなんですね。
主人公はまだ子供なわけです。
使徒と戦う組織のトップである父親に呼ばれて、「お前はこれに乗りなさい」と急に言われる。
嫌だ嫌だと思いながらも自分を奮起させて何か分からないものと強制的に戦わされるんです。
このことがあることとシンクロしているからヒットしたんです。

それが何かと言うと、それは思春期なんです。
親に皆さんも言われたことがあると思います。
「勉強しなさい」
「良い会社に入りなさい」

なんで勉強しなきゃいけないんだろう、なんで良い会社に入らないといけないんだろう。
皆さんも思ったと思います。
「とにかくやらなきゃいけないのよ」
それで逃げちゃダメだ逃げちゃダメだで受験勉強をする。
そして一生懸命に勉強して良い会社に就職しようとして努力する。
その子供の精神構造がエヴァンゲリオンのストーリーの構図と全く一緒なんです。
だからパイロットの年齢というのは14歳という思春期まっただ中。
そういう風な子どもたちにヒットしたからこの作品は人気があるんです。

じゃあ大人にも人気があったのは何故か。
そのエヴァンゲリオンに惹きつけられた大人たちというのは思春期の心をまだ持ったまま、引きずったままの大人たちなんですよ。
オタクとかニートとかいう言葉が増えたのもその当時のことなんです。
悩んでいる、色々なことに葛藤がある人達の心を取り込んでいったんです。

じゃあもう一つの理由な何か。
それはエヴァンゲリオンの声優さんたちの演技に関わることなんです。
エヴァンゲリオンというのは皆さんロボットだと思っていると思うんですが、実はロボットではなくて、それが難しいところなんですよね。

エヴァンゲリオンを動かしているのは脳なんです。
歩こうと思うとエヴァンゲリオンの足が動く。
腕が上がると思ったら上がる。
自分の体を動かすようにエヴァンゲリオンを動かしているんです。

そんなパイロットの演技ってすごく難しいんですよね。
だからこそ庵野監督は声優さんへのダメ出しが多く、演技指導も厳しいんです。
だから現場はいつもピリピリとしていてとてもシビアなんです。

主人公の声優である緒方さんと僕は仲がいいので、ここからは直接聞いた話です。
主人公の乗るエヴァンゲリオンが出た瞬間に使徒がレーザー光線のようなものを放って胸がただれてしまい、主人公が「熱い!熱い!」と叫ぶシーン。
そんな難しいシーンを緒方さんは一発オーケーを出しているんです。

それでオーケーを出した翌日、緒方さんが目を覚ますとものすごく胸が痛かったそうです。
あまりの激痛に病院に行って検査をし終わると病院の先生が「緒方さん、昨日何かありましたか」って聴くんですって。
「普通にアフレコをしただけですけど」と言うと
「いや、これはよく分からないんですけど、胸の内側が火傷をしているんです」と言われたそうです。

なんとそのアフレコの瞬間、まさに緒方さんと碇シンジのシンクロ率が100%だったんです。
燃えているような様子を想像して演技したら、なんと本当に焼けてしまっていたんです。
緒方さんや声優さんのシンクロ、そして見ている人とのシンクロ。
この二つのシンクロが国民にエヴァンゲリオンというアニメをシンクロさせることでヒットしたんだということです。

信じるか信じないかはアナタ次第です。

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