呼ばれる
526 :ガンジス ◆NUHAMZ6VTQ:2009/11/27(金) 21:17:02 ID:skpjXiMEo
オレが高2の夏頃、5歳離れた妹が肝試ししたいとグズりはじめた。
ノらなくていいのに親父まで「いっちゃおうか」なんてはしゃぐ始末。
オレはいわゆる"見える"体質で物心ついた頃からそうだった訳でもなく、若気の至りで色々バチ当たりな事をしてそうなった感じ。
ンで、その頃にはばっちり見えちゃうようになり、
怪奇現象にも悩まされあまりそっち系には関わりたくなかった、なかったが仕方なく行く事になり
場所は都内某有名巨大霊園
出ネエヨソンナトコ…
そう思いながらもマンションを出て通りでタクシーを拾った。
道中、妹は当時オカルトに興味津々でデジカメを持って
「あーでもだんだん怖くなってきたーw」
親父は
「む、瞑想にふけよう」
などとはしゃいでいた。
このような好奇心旺盛ブッ込みタイプが一線を越えた時、七転八倒する事を身を持って知ってた俺は
「あんま調子のんないようにね」
浮かない顔で呟いた。
現地に着くと1メーターちょっとの料金を払い敷地の真ん中辺りから入り肝試しはスタートした。
にしてもここ、敷地がバカに広い、俺と妹は動けるとしても親父は足が悪いので敷地の4/1を2周ほどした。
墓石のないスペースで親父が長ったらしい般若心経を覚者ぶって唱えた以外は、案の定何も起こらず妹は不満気味でそこらじゅうを
デジカメでカシャカシャ
「家の裏の墓場知ってる?」
最悪なことを親父は妹に聞いてしまった。
家の裏、正確にはリビングと親父の部屋の裏には寺が焼かれ墓場だけ残った敷地が人目につかず ポツン とある。
ポツンとあるだけなら構わないのだが、実家で飼っている柴犬をリビングで遊ばせていると時々そこから
フラフラと来る。
なんつーか輪郭だけで濃くなったり薄くなったり
別になにするわけでもなくリビングを通り抜けるのだった。
時々振り向いて立ち止まる(留まるのがただしいか)やつもいて、そうなると犬ッコロがそいつに吠えたりしていた。
そんな場所を何も知らない親父は愛娘に提案しやがった。
俺はさすがにヤバいと思い、親父に今日はもう疲れたから帰ろうと半ば強制して帰路についた。
家に戻り、撮ったデジカメをお袋に見せてる妹と親父を傍目に俺はシャワーを浴びて、再び支度をした。
裏から呼ばれていたのだ。
おーい、こいよ
なんて呼ばれた訳じゃないが、裏の墓場がイメージだけの状態で脳裏にフラッシュしている。
こういった時「あぁ呼んでやがる」
と直感で思うのだ。
小さめの懐中電灯とタバコをポケットにいれ、スニーカーを履いた。
「ちょっとコンビニ行ってくるわ」
誰に言うでもなく一言放った瞬間、ツンッと頭痛がした。
「呼んでやがる、間違いなく呼んでやがる。」
マンションを出て左に曲がり、2軒隣の敷地を入った。
入って右手にプレハブが建っているが人の住んでいる様子がない。
寺がないから坊さんもいないのか?
そのプレハブを背に前を見ると墓地があった、予想以上に荒れていた。
そこら中雑草が生い茂り、名の入った墓石が棒倒しに積まれていて墓地中央に古い大木が腰を据えている。
漆黒の夜がその雰囲気を醸し出していた。
ツンッツンッツンッと
こめかみを突き抜けていく頭痛がする。予兆だ。
ポケットから懐中電灯を取りだし、足元を照らしながら手前にある申し訳程度の階段をおりた。
プレハブ前からも見てとれたが木の看板が傾いて大木の前に突き刺さっていた。土ガエルとかもいて踏まないように、
いや転ばないように注意深く看板に近づいた。
「苦しまず 悶えず 息もせず 待ちくたびれた場所」長方形の寂れた看板に縦に筆で殴り書きされていたソレを見たしゅうかん
ヤバッと声にならない声が出た。足が重い鉛のように重く両肩の裏がアツい。
単発の頭痛に合わせて耳鳴りもしてきた。
ヤバいヤバいヤバい
涙が勝手に頬を流れ、大木に白い湯気(煙?)のようなものが絡まりまくってる。
悲しい、無性に悲しく腹立たしさまで感じてきた。
「チリリリリリリリン…」
黒電話の着信音に設定された携帯の音で我にかえり
急いで踵を返し、ダッシュで階段を上がりプレハブを通過し敷地を出て家に帰った。
自分の部屋にはいりしばらくしても夏なのに寒くて
布団にくるまってタバコをひたすら吸っていた。
その後は大した災いもなく一瞬感情がヤられただけで済んだのだが、
それと関係なしに後日そこに眠る彼らに追悼の意も込めて花束を添えておいた。
しかしなんにせよ、やっぱり親父と妹がいかなくて良かった!
俺がいるだけで巻き込んでた可能性が高い。
この墓地は今もあの状態のまま実家の裏にある。