赤い手

420 :ゆず:2009/08/31(月) 21:40:31 ID:84nW7Ius0
私は、あれ以来夜中にベランダに出ることができません……。



そう。あれは、夜中のベランダで起きた恐怖の話――。






「ここがあたし達が泊まるトコ?」

「そう!ケッコーいいトコでしょ?」

「うん!裏には湖もあるんでしょ?」

「しかも、あたし達の部屋、1階で湖が目の前なの!」

「スゴーい!!」


私は、友達と2人で旅行に来ていた。

今日 泊まるのは、ちょっと田舎の旅館だけど、とてもいい旅館に思える。


早く、湖が見たい――。





「おぉ~!!キレイな部屋じゃん!」

「あっ、見て!キレーな湖!」

「スッゴーい……」







「おやすみー」

「おやすみ」


パチッ――。


電気を消す。



もう夜。

消灯の時間――。







「スゥー、スゥー……」

「――んっ……」


夜中。突然、目が覚めた。


「スゥー、スゥー」


友達は、相変らず寝息を立てている。



完全に目が覚めてしまった。



風にあたりに行こうかな――……。




――ガラッ――


私はベランダに出た。


部屋から出るのもどうかなー、と思ったので、ベランダ。


「はぁー、気持ちぃー……!」


外は、夏とは思えないぐらい涼しい。



……にしても、湖キレイだなぁ……。



私は、ベランダの柵(?)に手をかけ、「はぁー……」とため息をつく。




……あれ?


湖の真ん中に、赤い点がある。



「えっ……えっ!?」


その赤い点が私の方に向かってくる。



……その赤い点は、手のようだった。


――血?



「――っ……きゃぁっ!!!」


その手は――私の首に――……。


「ぅ……ぐっ……」


ものすごい力で首を絞められる。


「……うっ……はぁっ……」


苦しい。
息ができない。


「……だっ……れ、か……」


声にならない声を上げる。


でも、誰も気付かない――。




その手は、私を湖の方へ引っ張る。


「……やっ……いやっ……!!」


――すると、首から手が離れる。


「……は……あっ……」



私は、その場に倒れた。







「――ず?」


遠くから声が聞こえる。



「ゆずっ?」


「……あれっ……」


――もう朝……?


「どうしたの?こんな所で寝て!」

「ゴメンっ、夜中に風にあたってたら、寝ちゃったみたい」

「ったくもうー……」


私達は、部屋に入る。



布団をしまい、服を着替える。


「よしっ、行こうか」

「あれっ、どうしたの?」

友達が、私の首を指して訊いてくる。


「何が?」

「その首――」


友達に手渡された鏡を見る。


「――っ!!」



私の首には、赤い手形がくっきりと残っていた。














※この話はフィクションです。

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