迷子

106 :夜薙:2008/09/16(火) 06:04:04 ID:oBRahKXs0

1人で街を歩いているときに気になる声が聞こえてきた。

「おかーさーん、おかーさーん」
迷子がいるのか。
そう思って歩き出すと、交差点の中で幼稚園くらいの男の子が、大人たちを見上げながら必死で叫んでいた。

大人って冷たいよな。俺はそう思ってその子に話しかけることにした。

「ねぇ僕、どうしたの?」
するとその子はキョロキョロと辺りを見てから俺に向かってこう言った。

「お前には俺が見えるんだな」

明らかに先ほどまでの声とは違う、異様に低い声で男の子はそう言い薄く消えていった。

トラックのクラクションで気を取り戻した俺は急いで横断歩道を渡り切って、
交差点の端に置かれた枯れてしまった花に気が付いて手を合わせた。

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