大阪城公園

633 名前:ちんぎす :03/01/13 21:58
中学時代からの友人、A君とのお話。

予備校時代、よく夜に地元の仲間であつまって、大阪城公園で飲み会やってたんです。
場所は天守閣前の広場。
知ってる人は分かるとおもいますが、
観光客相手の売店は夜になって閉店してもベンチやテーブルを片付けないので酒やつまみを持ちよって騒ぐにはもってこいだったのです。
なんとなく集まって、酒飲んで、受験へのグチや進路への不安なんかを吐いて。
ゴールの見えない受験戦争の最中の、ひとときの休息でした。 

そんなある晩のこと。
その日は僕とA君ともう1人、合計三人で「受験だりぃ~」なんて
言いながら盛り上がってたんですね。場所はいつもと同じ、天守閣前の広場。
そのうち1人が帰っちゃったんで、それからは僕とA君だけが残りました。
大阪城公園は実は結構な心霊スポットでして、そこらじゅうに
首吊りに使われた木があったり、はたまた本によっては
『天守閣前の広場に淀君の幽霊が出る』なんて紹介されてます。
ですが、まぁ、淀君にお会いした事は一度もなく、
たまに変な声がするから茂みを覗いてみたらカップルがサカってたくらいでした。 


その日も、平和なままそれから2時間ほど経ち、時刻はたしか真夜中0時ごろ。
さあ帰ろうという話しになり、ふたり自転車を並べて走らせてました。
暗い道は街灯があるものの少し不気味です。
恐怖心をまぎらわすために、僕達は少し多弁になっていました。
その時、先方30mほどの街灯の明かりの中で、排水溝のふたの上に
高さ40~50cmの『黒い正三角形』が立っているのが見えました。
何のコトだか分からないとおもいますが、本当に『黒い正三角形』としか
形容しようがない。付け加えるなら、輪郭がボンヤリしていた
というコトくらいです。 

「目の錯覚かな」そんなに飲んでないけど、まぁ酒も入ってるし。
そう思って、構わず僕がB君に話しかけてると、
何とその『輪郭がぼやけた黒い正三角形』は
僕の視界の中で、蓋を通り越して「スゥ~~~っ」と排水溝に入っていったのです。
その三角のカタチは崩さず、
まるでシュレッダーに書類をほり込んだ時のように。
なんの引っかかりも無く、実にスムーズに。 

「変なの。きっと目の錯覚だな。」
そう思った僕は気にせずに、B君との話しを続けてました。
ですが五秒ほど経った時、B君が僕の喋りをさえぎって
「あの…………ところで、いまの……見えなかったの?」
「え……。」

驚きでした。B君にも、あの『輪郭がぼやけた黒い正三角形』が
見えてたそうです。
もちろん、スゥ~~っと排水溝に滑り込む過程もバッチリと。
ですが僕の様子を見て、僕が余りに気にしてない様子だったので、
自分の目の錯覚かとおもっていたそうです。 

その時点では、すでに排水溝から数十メートル行き過ぎていました。
「今の何だったの!!??」
そうおもったものの、すっかり仰天していた2人に
もう一度ひき返して確認する度胸があるはずもなく、
そこからは2人、「ひぃぃ~~」と言いながら全力疾走で公園を後にしました。

今でも頭に浮かびますよ。
あの『輪郭がぼやけた、黒い正三角形』。
一体なんだったんだろう。
にしても物理法則無視しないでよ。あー驚いた。 

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