首引っ込めやがった

585 名前:ちんぎす :03/01/13 02:55
今日は大学時代の友人だったB君の話。


ある年の夏休み、総勢12人くらいで北陸に旅行に出かけました。
車を三台出して、結構豪勢な旅行です。
宿代を浮かす為にお金持ちの先輩に頼って、
別荘を宿泊に使わせてもらうことにしました。 

旅行2日目の夜。
その日は夕食後、はからずも怪談大会になりました。
別荘のリビングに集まって、僕がみんなにこわい話をするのです。
僕の怪談好きを知っている先輩の命令でした。
怪談は僕の得意中の得意。
僕は当時、夏の怪談番組は何があっても欠かさずチェックするほどの
怪談好きでしたから、テレビで仕込んだ得意のネタを次々披露して
10人以上のメンツを恐怖のどん底に叩き込んでました。 

怪談話をすると幽霊が集まってくる、とお決まりのマクラから始まり、
僕の喋りは話を重ねるごとにますます絶好調。さあ次は何を話そうかと
おもっていたところ、
布団を首までかぶったB君(怖がり)がキッチンの方にむかって
「おいM!そんなトコに居ないでこっちこいよ!
幽霊みたいでこわいから!」

皆いっせいにそっちをみましたが、Mくんはいません。
B君は
「あいつ、首引っ込めやがった!」
というと、電気の消えたキッチンの方にむかって怒りながら歩いていきました。布団を纏ったままで。
B君いわく、
後輩のM君が、キッチンの半開きのドアから首だけ出してこっちをみてたため、
幽霊みたいでこわかったそうです。 

そういえばM君は、怪談がこわいと言って中座したのでした。
またMがバカな事やってる、と皆全然気にもとめませんでした。

B君がキッチンに入った直後、
「ひひょぉえぇぇぇ~~~~~~」
という聞いたことも無いような情けない声を出して、こっちに
猛ダッシュしてきました。
ダッシュした勢いのまま、床に座っていた女子2人をピョーンと跳び越え、
壁際に置かれたソファに「バふっ!!!」と着地して震えています。
みんな、あまりの様子に唖然としていると、
B君が「誰もおらん!誰もおらんかった!!!!!!」と震えながら
叫びました。 

おもえばその日は、自殺の名所であるT坊やら有名な禅寺やらを
観光してきたので、誰かが連れてきちゃったのかもしれません。
ちなみに大急ぎでM君を探したところ、彼はのんびり湯船につかっていました。
キッチンとはかけ離れたオフロで。

この時目撃したB君はおびえきっていたのに、
見えなかった他の人達から
「へー、見たの?ねえねえ、どんな感じだった?」
と好奇心まんまんで聞かれ、かなり参ってました。
「忘れたいから聞かんでくれ~~」と半泣きで言うのが面白かったです(w 

そうそう、補足せねば。
後輩のM君は、色白で黒ブチのメガネをかけた男なんです。
で、B君は視会の端で青白い肌の黒ブチメガネの男が見えていたらしく、
それでM君だとおもったそうです。
『幽霊みたいに』顔だけ出してこっち見てるから、てっきり
M君が驚かそうとおもってるんだ、と……。

まぁB君はお気の毒に。首を引っ込める動作まで克明に見ていたそうですし。
結局霊障らしきものはありませんでした。車がパンクしたくらいかな。 

前の話へ

次の話へ