すみません

662 本当にあった怖い名無し 2012/09/01(土) 16:27:27.83 ID:1An3DAHd0

日々の疲労を抱えたまま揺られる通勤電車。 
突然の急ブレーキ。 
乗車率200%超の車両内は将棋倒し寸前。 
人身事故を告げる車掌のアナウンスに混ざり、至るところで交わされる 
「痛い」「すみません」「大丈夫ですか?」の声、声。 

不意に、気弱そうな青年の声。「迷惑掛けてすみません・・」 
耳ではなく頭の中で反響するかのような不思議な感覚。 

運転再開。 
また変わり映えのない日々が始まる。 

得意先からのクレーム電話。 
先方の怒声が耳に響く・・。 
「迷惑かけてすみません・・」同時に頭の中で反響する。 
自分自身の心の声か・・。 

翌日。幹部からの呼び出し。 
「君の部隊の成績は・・」役員の怒声が耳に響く・・。 
「迷惑かけてすみません・・」同時に頭の中で反響する。 
また、自分自身の心の声か・・。 

自宅。妻の声。 
「あなたはいつも仕事ばかり・・」寛げるはずの家庭でも怒声が耳に響く・・。 
「迷惑かけてすみません・・」同時に頭の中で反響する。 
また、また、自分・・・ 

もう何度同じことが繰り返された? 
お得意先の方々、会社幹部の方々、妻よ・・もう疲れた。 

「迷惑掛けてすみません」「迷惑かけてすみません」 

今、ホームの最前列に立つ。 

「迷惑掛けてすみません・・・」 

さようなら。 

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