通夜の席の天井

587 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :02/10/27 01:45 
6年前に、俺の祖父が病気で亡くなって、お通夜が行われた日。

一通りの段取りが済んで、ご近所さんなんかはみんな帰り、
ごくごく近しい親族だけが残って、横たわっている祖父のそばで
なんとはない世間話などしていたんだが、
俺の従姉の子(当時2歳)が、母親の手に抱かれながら、やけに天井を見上げてる。
周りにいたみんなも気がついて、ちらちらと上を見るんだが、別に何も見えない。
それでも気になって、その子に「どうかしたの?」と尋ねると、
その子は「じーっ、じーっ」と答える。
「じー」とはその子が常日頃祖父を呼ぶ時に使っていたので、
「あぁ、こりゃこの子にはその辺にお祖父ちゃんがいるのが見えたのかねぇ」
なんて、軽い感じで言ってたんだが。

俺も、見えたんだよね。

天井の、隅のほうに、なくなった祖父がぼぉっと、透けたような感じで浮かんでて
じぃっと、こっちを見てる。
それだけじゃない。
その隣に、どこかで見たような女の人が、やっぱりぼぉっと、こっちを見てたんだ。

本葬がすんで、遺体も焼いてもらって。
その後もずっと、その女の人が誰だか思い出そうとしたけど、全然思い出せなくて。

でも、初七日が過ぎた頃にふと、思い出したんだ。

祖父が最後に入院たばかりの時、同じ病室の、祖父のすぐ隣のベッドに、
その女の人も入院してたこと。
その後、彼女は祖父よりも早く、集中治療室に移ったって話を、
祖父に付きっ切りだった伯母が話してくれたことを。 

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