叩く男

129 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :02/02/13 05:21
 一人暮しを始めて半年ほど経った秋の早朝、
誰かが玄関の扉を勢い良く叩いている。
布団から手を伸ばして携帯を見ると午前7時。
客が来る予定はないし、セールスが来るような
時間でもない。大体うちは一人暮し用のマンション
なんでセールスなんてほとんどこない。面倒
で布団に包まってやり過ごそうとしていると
ドアノブをゆっくりと捻る音が音が聞こえた。
「しまった!昨日帰ってから鍵締めてねえ!」 

靴を脱ぐ音は聞こえないので「ああ、カタギの人じゃないな」と
絶対に泥棒か強盗だと思った。怖くて布団にくるまっていると
すりガラスの引き戸一枚隔てたキッチンでナベやフライパンを
いじる、甲高い音が聞こえる。寝ているふりをしていれば
取るものとって帰ってくれるだろうか。訪問者はいつまでも
キッチンをいじりまわしている。蛇口から水が流れる音も
聞こえる。一体なにがしたいのかまったく分からなくて
ものすごくこわかった。 

音がやんで、布団から覗き見るとすりガラス越しに
男がじっと立ってるのが分かった。180cmくらいの
細身の男が戸のすぐ前に立っているのがわかった。
目が合った気がした瞬間男が戸を思いっきり叩き
はじめた。すりガラスがすごい音を発ててゆれた。
もう目的が全くわからなくて涙ぐんでただ布団に
くるまってました。2,3分くらい男は戸を叩いていました。
ふと辺りが静まり返ると足音がして、
ドアを開ける音が聞こえました。 

今思うとドアを開けて帰ったふりをして
待ち構えていた、とかそういう思考が
どうしてできなかったのか分かりませんが
男が帰ってくれたと思いこんだ自分は
なんの警戒心もなく寝室を飛び出し、
玄関の扉まで走り寄って鍵を閉めました。
モチロン男は本当に帰っていたから今こうして
カキコできてるんですがw。
キッチンの流しの蛇口から水が静かに流れていて、
コンロからなぜか床に置かれたナベやヤカンに
ものすごい悪意を感じて身震いしました。
ナベやヤカンは新しいものに変えて、以来どんな
時でもキチンと鍵をしめています。
終わり:長々とスマン 

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