うちのばあちゃん

561 :本当にあった怖い名無し:2010/08/16(月) 08:02:28 ID:Iu1JHSI50
うちのばあちゃん、今年で(戸籍通りなら)83になる人なんだけど、やたらとリアルに「狐」とか「狸」とか信じてる人なんだよね 
曰く「『きづね』だば生がして帰すども、『むじな』だば人どご殺す」んだって 

我が家の三軒隣りから嫁いできたくらいで、いってみりゃ、うちの部落に根が生えちまってるようなババ 
65年前の一昨日の晩には、十数キロ先に焼夷弾の嵐食らって、「落どした針も見えるえんた明るさ」に震えてたババだ 

んで、この人、狐に関する怪奇談は、どうやら身をもって経験しているらしいんだ 
「今、大排水通ってら道あるべ? あっこどご○○(親戚の某らしい。関係は俺にはわからん)ど自転車で夜あるいであったなや 
 狐火も何もね、たんだ狐着いで歩ぐなや。おら、刺身だのなんだの入った御馳走ぉたがいでらもんだもの。追(ぼ)ってやるなや 
 せば、一時だばいねぐなるなや。したども、あえがだ(彼等)だばどぶで(図太い)して、なが~ながいねぐならねんだっきゃ」 
一応、狐火なんかも見たことあるらしい。「おっかね」っていうわりには怖がってなさそうなのは、人を殺す「むじな」じゃないからなんだと思う 
割と地に足のついたことしか語らない人で、「むじな」ってのがどんなものかは尋ねたこともない。たぶん、語れないと思う。本人死んでないし 
大正の昭和とのはざかいに生まれたババが、平成のこの御時世に、真剣な目で狐とか狸とか語って聴かせてくれる。それだけで、もう、おなか一杯だ 

ちなみに彼女の目下の悩みは、我が家から100mほど離れた杉林沿いの畑を耕している時、杉林から聞こえるという、得体の知れない呻き声だそうな 
「熊だばおっかねがら、鍬持って守ってけれ」っていわれ、ソコで護衛がてらジャガイモ掘らされたのは先週の話(傘寿越えて、さすがに人を頼るようになった) 
「むじな」にも会わず、爆弾にもやられず、今まで「どぶでぐ」生きてきた癖に、何を今更、貧弱な孫なんかに頼る必要があるのかと思いつつ 
今日も彼女の甲虫のような後ろ姿に、頼もしさを感じるのみだ。へたすりゃそろそろ、俺を「起こす」ため、二階にやって来そうな気配がする 
彼女の配偶者である俺の爺様は、大脳の奇病で俺が三歳の時に亡くなった(今、帰ってきてるだろうか?)。でもたぶん、この人は、曾孫を抱くまで死ぬ気がないw

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