2人分の弁当

49 :本当にあった怖い名無し:2010/07/09(金) 00:15:03 ID:yku12oxC0
高校時代の友人が結婚して、式の為に友人の実家の方へ呼ばれた。 
山に囲まれた田舎で、道路こそ舗装されていたが、家より田んぼの方が多い。 
俺は車が無いので、バスを乗り継いで2時間以上乗るハメになった。 
友人の家は、庭に大木の生えた大きな家。 
式は公民館的な場所で行われ、出席者は100人以上いたかも知れない。 
終わったのは、陽が沈みかけていた頃で、俺は飛行機が無いので、友人宅で 
一泊する事になった。 
翌日、帰る時に友人の母親が、弁当だと言って小さな包みを2つくれた。 

帰りのバスも乗り継ぎで、最初のバスを降りてから30分程待つ事になる。 
バス停は大きな舗装道路沿いにあって、すぐ後ろは山。 
道路沿いには他に何も無く、車は1台も通らなかったと思う。 
俺は弁当を食べようと思ったが、2つある包みの中には、それぞれに赤飯と 
おかずが2つの容器に分けて入れてあった。 
1人分の弁当なら、包みの1つに赤飯、もう1つにおかずじゃないのか? 
俺が渡されたのは、2人分の弁当という事になる(俺は独身である)。 
「?」と思いながら弁当を食べていると、しばらくして視線を感じた。 

ふと、横を見ると、見知らぬ若い女性が少し離れて立っていた。 
乳白色の着物を着ていて、目が異様に大きい以外は美人の部類だと思う。 
心臓が止まりそうになって、しばらく体が動かなかったのを覚えている。 
箸を止めたまま見つめ合っていると、女性が少しずつ近付いて来た。 
それが凄いプレッシャーで、まともに息も出来ないくらいだった。 
女性は、俺に手が届く程度の距離まで近付くと、目を細めて何か言った。 
日本語だったと思うが、ほとんど聞き取れず困惑していると、女性が着物の 
裾から枯れ枝の様な箸を取り出したので、手を付けていない方の弁当を 
咄嗟に差し出した。 
弁当を受け取った女性は、目を細めて嬉しそうな顔をしたので、それが少し 
可愛くて和んだ。 
バスが来ても女性は弁当を持って立ったままで、見送っている様だった。 
一礼すると、又何か言ったが、やはり意味不明だった・・・・・・・。 
バスの窓から見ると、凄い速さで山の斜面を駆け上って行く女性が見えて、 
腰を抜かした。

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