頭半分ない影

456 名前: 健康茶流@カテキン緑茶 [sage] 投稿日: 04/11/25 16:42:16 ID:0xT7TH9y
弟が通っていた中学校は小高い山の上にありました。
この山はつい30年ほど前まで人も分け入らぬ森で覆われていて、
山の中腹に隠れるようにあった小さな墓地へ続く舗装もされていない細い道が一本あるだけだったといいます。
学校を建てる際この墓地をずらしてグラウンドにしてしまったので、生徒の間では様々な怪談が生まれました。 

それらの怪談の中に、夜中グラウンドに立って自分の影を見てみると、
頭が半分ない影が見える、というものがありました。そしてそのような影を見てしまった者は、
近日中に命を落とす、というのです。
当時その中学校で生徒会役員をしていた弟も、
どこにでもある学校の怪談だといって真剣には取り合っていませんでした。 

その日は、間近になった文化祭に備え、弟は他の役員達と一緒に夜中まで学校に残って準備をしていました。
作業もようやく一段落し、残っていた教員と校舎を出て別れて、
帰路が同じ方向の友人達とグラウンドを横切って外に出ようとした時です。
弟はふと例の怪談を思い出し、何気なく振り返ると自分の影を見ました。
月明かりに照らされて長く伸びきったグラウンドに映るその影には、頭の左半分がありませんでした。
目の錯覚だ、一瞬そう思って左右の友人の影に目を移すと、友人の影にも頭左半分が映っていません。 
弟は血の気の引くような悪寒に襲われましたが、
何も気づかず談笑する他の友人には黙ったまま憂鬱な面持ちでそのまま家に帰って行きました。 

数日後弟は高熱を出し、左目の周囲が赤くはれ上がって二晩ほどうなされていました。 
眠っている間、髪を振り乱した女に首を絞められる夢を何度も見たそうです。 

翌年、グラウンドの土砂の入れ替え作業中に、人間の骨の一部らしきものが見つかりました。 
医者である父が鑑定を頼まれ、調べたところ、女性の頭蓋骨の左目の周辺の骨と分かりました。
警察も、以前墓地を移す際に漏れた骨であろうと判断し、
どの墓にあったものかまでは分からなかったので、移転先の墓地の無縁仏の墓に葬られました。 

爾来この怪談はこの中学では聞かれなくなりましたが、これは開発が進んで子供達の間に 
怪談など広まる余地もなくなったのもひとつの理由かもしません。 

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