二人乗り

知人から聞いた話。


念願の大型自動二輪免許を取ったばかりの直人は、婚約者の伸子を連れて旅行に
行きました。
真新しいハーレーのタンデムシートには婚約者の伸子。
伊豆への温泉旅行です。

テンションの上がった直人は、高速道路に入ると俄然張り切りました。
ハーレーはものすごいスピードで疾走しています。
後ろでしがみついている伸子の長い髪の毛は、風と一体化して尾を引くように後ろに流れています。
よほど気持ちいいのでしょう、伸子は大声で雄叫びを上げるように喜んでいます。
直人はさらにスピードを上げ、マシンの最大速度までアクセルを握りました。
興奮の余り万能感に満ち満ちている直人は、追い越しを始めました。
トロトロ走っている大型トラックをあざ笑うかの様に、わざとギリギリまで車体を寄せて、
一気に走り抜けるということを繰り返しました。

そうこうしている間に、目的地に近くなってきました。
さすがに運転で疲れた直人は、少し休憩をしようとサービスエリアに寄ることにしました。
軽く休んでいこうか、と後ろの伸子に話しかけたものの返事がありません。
おや?と思い、後ろを振り向くと、伸子の首がありませんでした。
長い髪の伸子は、大型トラックを追い越した時、トラックの一部分に髪が引っ掛かり、首がもぎれとられていたのです。
高速で走っていた為に、バイクから引きずり落とされる余裕もなく、首から上だけが置き去りにされたのです。

そうとは知らず直人は、首のない婚約者を乗せたまましばらく走り続けたという訳です。

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