ニートの外出

452: ニート:2011/07/07(木) 22:15:31.32 ID:wx/UcfrU0
ある日中学の時の同級生から電話があった。
「一昨日Tが交通事故で死んだけど、一緒に葬式に行かないか」中学を卒業して五年。
俺と友人は地元の大学に通っていたので時々会っていたが、Tのことは一度も話題にならなかった。
 
「確かに同じクラスだったけど、あいつとは口きいたことほとんどない。
ていうか、誰って感じだよ」俺はTが死んだと聞いても何も感じなかったし、
友人もそうだろうと思った。

「あいつ影が薄いっていうか、地味な奴だったからなあ。高校中退して
ニートやってたみたいだから、全然友達がいないらしいんだ。そんで
Tの母親が俺の親に、親戚の手前みっともないから、友人として葬式に
来てくれとか頼んできてさ。香典は向こうで出すそうだし、ちょっとバイトだと思って行こうぜ」

「Tが死んで家族もせいせいしているのか、面白そうだな、ちょっと行ってみようか」
そんなノリで葬式に参加すると、祭儀場で晩飯を振舞われた。
俺と友人が寿司をつまんでいると、Tの親の知人が話しかけてきた。

「君らはT君の友人か?」「友人というか、同級生でした」俺がそう答えると
「じゃあ最近のTのことはしらないんだ」とオッサンが言った。

「何年も一人で部屋に籠もってたらしいが、親が注意するとバットを振り回して
大変だったんだ」俺はTがヘタレでいつもビクビクしていたことを思い出し、意外な気がした。

「信じられないっすね。中学の頃は大人しくて、ケンカとか一度もしたことなかったっすよ」
友人がオッサンに言うと、「家族が寝てる最中にバットで襲ったらしい。
親父さんは意識不明で病院に運ばれて、大変だったんだ」
俺らはそれっきり黙りこんだが、親を殴り殺そうとしたTにびびった。

「どうして引きこもりのTが事故にあったんですか?」友人が興味深そうに
オッサンに尋ねると、「それを知りたくて君らに話しかけたんだけどね」と言われた。
結局引きこもりのTがなぜ外出したのか謎だったが「まっ、どうでもいいか」という感じだった。
 
その時、世の中には生きていてもしょうがない奴がいるんだなと思った。
2ちゃんもそういう奴がいっぱいいる感じだが、多分原因不明で謎の死を遂げるような気がする。 

前の話へ

次の話へ