タン

170 : 死ぬほど洒落にならない話。[] 投稿日:03/06/27 17:42
なんていう奴だったかなあ、そいつからこんな話を聞いた事があった。 

昭和の30年頃の話だった。つまり、その男の食べ物への嗜好は変わっていた。 
どうか変わっていたかと言うと、とにかくある物に異常に固執していた。それはなにかというと痰(タン)だ。 
道端にググゥカーッペっと吐きつけるタンだ。それが彼にとっては堪らなく美味であった。 

彼は、道端に吐き出された青タンを見付けると、思わず喉がゴクリと鳴る。口の中に生唾が湧くのである。 
周りに人がいない時は、素早くしゃがみ込んで手ですくって、口の中へ入れる。タンのネバっとした食感が 
彼には至福の瞬間だった。 

当時、映画館に行くと、便所の隅に白い陶器で出来たマグカップのような「タンつぼ」が置いてあったものだ。 
特に場末の薄汚れた映画館には、彼の好んで飲むタンが多かった。なかでも赤い筋が2,3本走っている 
タンを見つけた時には、カップを持っている手が震えるほど興奮した。 

彼は大便所に入ると、早速カップを口にあてて、いとおしむようにゆっくりと口に流し込んでいく。 
ジュルジュル、ジュルジュル、と最後の一滴まで飲み込むのである。 

なんでそんな事をするようになったんだって聞いたら、なんでも○をなぶり殺しにして、祟られた 
って言ってた。

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