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50 本当にあった怖い名無し sage 2013/03/30(土) 01:10:05.92 ID:7USrysyG0
流れぶった切るごめん 
私は登山と写真撮影が趣味で、よく山へ遊びに行きます。 
富士山とか高い山に登るわけではなく、低くても美しい景色を撮れたらいい、といった感じで、その日も友人も誘って田舎の方の少し高めの山に登りました。 
最初こそ同じ写真撮影が趣味の友人と楽しく撮影をしていましたが、真夏日だったのにいやに日が早く暮れてしまい、奥まで入っていた私達は、案の定、宿へ戻れなくなってしまいました。 
方位磁石もその場をクルクルと廻るだけで壊れていました。 
携帯も繋がらず、とりあえず何かあった時の為に持ってきていた簡易キャンプセットと寝袋で一夜を明かすことになりました。 
その場で友人と写真を見ながら朝を待っていた時、ガサリと私達の前の草が揺れました。 
最初は風とか虫か、小動物くらいかと思っていましたが、暗い森から出てきたのは、結構イケメンな中学生くらいの男の子でした。 
「なんでこんなところにいるの?」と友人が男の子に聞くと、男の子は「お姉さん達こそ、なんで此処にいるの?」と返してきました。 
私「迷っちゃって」 
男の子「うっそぉ迷った?なんで?」 
私「撮影してたら遅くなって。君は地元の子?」 
男の子「地元?いや、…うん、うん?地元?…地元やけど、うん」 
今思えば、既に夜中10時は回っていたのに山の奥に男の子がいる時点で怪しいものですが、その男の子が余りにも普通の子だったので怪しむまでもないと思っていました。 
暫く「うん、うん…」と繰り返していた男の子が、「俺、おじゃみ貰いにきたんや」と言いました。 
おじゃみって?と訊こうとも思いましたが、男の子が「しゃあないから、帰るついでに連れてったるわ」と云うので、大人しく友人とついていくことにしました。 
友人も私も、暗い山で心細かったので、話題がつきないようにずっと会話を続けていましたが、男の子は相槌を打つだけで自分から何かを話すことはなかったと思います。 
続きます 

暫く獣道を歩き続けていると、途端に山道が途切れて町中にいました。 
本当に一歩踏み出しただけで、ワープしたような感じで景色がガラリと変わって、友人と顔を見合って混乱していました。 
男の子もいつの間にか消えていて、自分が今何処にいるのかも分からなかったのでとりあえずコンビニに入って店員さんに場所を聞くと、登山の為に来ていた町の隣。 
店員さんに怪しまれ、冗談めかして経緯を話しましたがやはり信じてはくれませんでした。 
その後はタクシーで宿に戻って寝ました。 
帰宅してから気になってその山について調べましたが、とくに伝説も伝承もない山だったので、男の子の正体は結局分からず仕舞いでした。

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