たまねぎ老人

37 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/05/22 06:02
「見ろよ、たまねぎ老人だ」 
 吐き捨てるようなささやきに振り返ってみると、にこにこしたとても小さな老人が道を横切ってゆくところだった。 
「いやなことがあるたびに過去を捨てて、あんなに小さくなったんだぜ。あ、ほら、また捨てた」 
 老人は服を脱ぐように体から何かをはぎとって、丸めてぽいと道に捨てた。また晴れ晴れとした顔で歩いてゆく。 
 なんとなく、いやな気持ちになった。誰か同じようにいやな気持ちになったのだろうか、老人めがけて石が飛んでいった。石は老人に当たり、老人の頭から血が流れた。 
 あたりがしんとなった。 
 すると老人はまた一枚過去をはぎ取って、丸めてぽいと捨てた。頭の傷ももうなくなって、老人はにこにこと歩いていった。 

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