写真 - 島田秀平

運動が苦手な、かなり太った男の子がいたんです。
体育の時間もいつも投げやりで、スポーツを最後までやり切れない。

でも(これじゃあダメだ)と思って、
かなり練習をして、学校のマラソン大会に出場したんです。

けれどいくら練習したからと言って、
やっぱりみんなのペースにはついていけない…、
それで彼だけを残して、みんな先にゴールしちゃったんです。

でもクラスのみんなも、
一生懸命に自分を変えようと頑張る彼を応援しようと、
誰一人先に帰らず、ゴールの前で彼に声援を送ったんです。

『頑張れ!頑張れー!』
クラスが一丸となって、彼を応援してる。

その声援が力になったのか、その男の子は最後まで走りきって、
なんとかゴールしたんです。
その瞬間みんなは歓声をあげて、彼のゴールを喜んだんです。

けれどその無理がたたったのか、
彼はこのマラソンのすぐ後に亡くなってしまったんです。

彼のお母さんは悲しみに浸りながら、思い出の写真を見てたんです。
それで、最後にマラソン大会の時の写真になったんです。

(あの子、最後に自分を変えようとマラソン大会に参加してくれてよかった…)
そんな事を考えながら、お母さんはマラソン大会の写真を眺めていったんです。

けれど、その途中、あり得ない写真があったんです。

それは男の子がゴールをする瞬間─
クラスのみんなが男の子に声援を送っている写真だったんです。

この写真…
男の子がゴールをしている周りで、
クラスメイトが『頑張れ!頑張れー!』と言っているその手が、
みんな一斉に閉じていたんです。
そしてみんなが、下を向いて目を閉じていたんです。
クラスメイト全員が一斉にこのポーズ。

ゴールをしている男の子の周りで、
クラスメイト全員が男の子に向かって、合掌していたんです。
まるで男の子が、すぐに亡くなってしまう事をわかっていたように…。

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