睡魔 - 桜金造
死神なんて本当に居るんでしょうか。
皆さん、急に眠くなることはありますか。
睡眠時間は足りているはずなのに、眠くて眠くてしょうがない時。
そういう時は気をつけてくださいね。
霊が近づいてきている証拠かもしれません。
私がそうだったんです。
2013年2月12日午前11時30分頃ですかね、わたくしは一人で風呂に入っていました。
朝風呂っていうやつです。
突然、急に眠くなったんです。
何だか気持ちが良くて、眠くて眠くて我慢が出来ないんです。
でもここはお風呂です。
こんなところで寝ちゃいけないと思って出ようと思ったんですけども、その途端に意識が飛んだというのでしょうか。
ズトンとまた浴槽に戻ってしまいました。
物音に気がついた家族が風呂場に飛び込んできましてね、「お父さん」なんて声を掛けているんです。
後から話を聞くと私の体の左半分がダラっと垂れ下がっていたそうです。
そして大急ぎで救急車を呼んだそうです。
救急隊員の方が私の体を揺すって顔を叩いて耳元で怒鳴るんです。
「寝てはいけませんよ、寝てはいけませんよ!
すぐに手術をしますから」
そして私はそのまま救急病院に運ばれまして。
全身麻酔を受けて頭蓋骨にドリルで穴を開けられて、緊急手術をしたんです。
脳の中の動脈が切れていたんです。
死んでいてもおかしくなかったんです。
(眩しいな)と思ってうっすらと目を開けてみました。
まるでUFOを下から眺めているようでした。
それは白い照明なんです。
(ここは天井だ・・・ここは一体どういうことなんだ)
下を見るともう一人の私が居るんです。
これは一体どうなっているんだろうと照明を指で触ってみると、確かに感触があるんです。
(これは一体どういうことなんだろう、何が起きているんだろう)
何度も考えてみるけども、さっぱりわからない。
カシャンとその時音がしました。
若い看護師が転んで手術道具を床にこぼしてしまいました。
「何やってるの、落ち着いてください」
と、婦長さんが怒っています。
次に目がさめたのは多分集中治療室だと思います。
周りには機械がいっぱいありました。
見ると体中にはチューブがたくさん刺さっていて、夜の十時か十一時くらいか、辺りは真っ暗でした。
そして変な声がするんです。
その声は「死ね、死ね」と言っているんです。
(ここは病院なのになんてことを言うんだ)
縁起でもないぞと思いました。
そして私は目を覚ましました。
集中治療室には私の他にもう一人いました。
私と足が向かい合うような形で寝かされていて、その人のベットの周りに黒いシルエットだけの影が四人も五人も居て、その人を囲むようにしています。
そして
「死ね」
「まだ死なないのか」
「早く死ねよ」
「死ね死ね」
そんなことを言っているんです。
(何を言っているんだろう、この人達はなんて嫌なことを言うんだろう)
そう思いながらも私はスッと眠りについてしまいました。
次の朝、その人はもう居ないんです。
ナースに後から聞いたならば、もう亡くなっていたそうです。
そして若いナースが私の指を拭きながら「どうしたんですか、ここだけ汚れていますね」と言うんです。
この若い看護師さんはあの時の人かなと思ったので
「あなたは私の手術を手伝ってくれた人ですか」
と聞きました。
「えぇそうですよ」
「あなた、薬の瓶を落として割ってしまったでしょう」
「え、どうして分かるんですか」
「僕、それを見ていたんです」
「まさか・・・」
「申し訳ないんですけど、手術室の天井の照明のところに指の跡がないか確認してくれませんか」
看護師さんは怪訝そうな顔をしたものの、私からお願いされたんで後で見に行ってくれたそうです。
そこには指の跡が三本くっきりと付いていたそうです。