明かり - 島田秀平

仲の良い男友達でAくんとBくんという人がいたんですね。
二人は昔から仲が良くて、だけどサラリーマンになってしまってなかなか会えずにいたんですが
久しぶりにAくんが住むマンションに集まって、朝まで飲んで泊まろうよという話になったんです。

二人はAくんのマンションに集まって飲んでいたんですけど、久しぶりに会ったものですから

A「あー、昔はこうだったよね」

B「楽しかったよね」

なんて盛り上がったそうなんです。
そしたら急にAくんの家の電話が鳴ったんです。
夜中の二時くらいに急に。

プルルルルル プルルルルル

A(え、なんだよこんな遅い時間に)

そうは思ったんですけど、Aくんは電話に出てみたんです。
Aくんは電話に出ると急に顔が真っ青になって

A「・・・はい、はい。
 分かりました」

BくんはAくんの態度にビックリするわけです。

B「こんな夜遅くに一体何の電話なの?」

Aくんは最後に「はい、分かりました」と言って電話を切ると
久しぶりにあったBくんにこう言うんです。

A「ちょっと、本当に悪いんだけど、今日は帰ってくれないかな」

B「おいなんだよ久しぶりにあったのに。
 急に帰れだなんて。
 もうこんな時間だぞ。
 こんな時間なのに急に帰れだなんて何なんだよ」

Bくんは流石になんだよと思ったんですけど、Aくんの態度はあからさまにおかしいし、
これは余程のことがあったんだろうなと思って、BくんはAくんのマンションを後にしたんです。

それでBくんは結構酔っていたので、気持ちがいいし、ぷらぷら歩いて帰ろうかなと思っていたら
Aくんの家に財布を忘れていることに気がついたんです。
明日でもいいかなとは思ったんですけど、まだそんなに遠くまで歩いてきていないし、
忘れたのが財布ですから、Aくんのマンションまでもう一度戻ってみようかなと思ったんです。
それで走ってAくんのマンションまで戻ったら外から見るとAくんの部屋はもう電気が消えているんです。

B(あー、あいつもう出かけちゃったのかな。
 でも財布だしな、うーん、一応玄関の前まで行ってみようかな)

それでBくんはAくんの部屋の前まで行ってみたんです。

ピンポーン

チャイムを押した。
中はシーンとしている。

B(あーそうだよな、もう出かけちゃったよな。
 でも財布だし面倒臭いな)

一応と思って玄関のドアノブをひねると、キィと玄関のドアが開くんです。

B(あれ、なんだよあいつ鍵かけてないのかよ。
 不用心だな)

そうは思ったんですけど、これはラッキーだなと思って、これで財布を取って帰れるぞと思って玄関の中に入ったんです。
中は真っ暗なんです。
明かりをつけようかなと思ったんですけど、どうにか手探りで行けそうだなと思ったので電気を付けないでいた。
手探りで廊下からリビングに入って自分の財布を見つけてそれを持って家に帰ったそうなんです。

それで酔っ払っていたので家に着くとすぐに寝てしまったんですけど、翌朝起きてテレビをつけると、テレビでやっているニュースが目に入った。
Aくんが夜中に自宅で何者かに刃物に刺されて殺害されていました。

B(え、あの時間俺はあの家にいたよ。
 Aが殺されるなんて、そんなことないだろ)

そう思いながらBくんはすぐにAくんの家に行ってみたんです。
すると警察官がたくさん居る中でAくんが殺された奥、その窓ガラスに女性の口紅でこう書かれていたそうです。

『昨日電気を付けなくてよかった』

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