恐怖の新聞配達 - ピース綾部

これは昔の話なんですけど、友達が新聞配達をしていたんです。
配達をするルートっていうのは決まっていて、その中の一つ、路地を入った角の家と奥の家に新聞配達をするという場所があったんです。

その一軒目の角の家というのは、古い一軒家でお婆ちゃんが独り暮らしをしているところなんです。
古い家なんで玄関がすりガラスの引き戸になっていて、真ん中が白く濁っていて、上と下が透明になっていて、真ん中に新聞を入れるところがある、そんな玄関だったんです。
それで友達はその家に新聞を入れて奥の家にも新聞を入れて、戻ってきてまた他の場所に行くという、そんな配達ルートで回っていたんです。

お婆ちゃんのところに入れて奥の家までは大体二十メートルくらいしか無いんですけども、
奥の家に入れて戻ってくるともう入れた新聞が無くなっているそうなんです。
それが毎回なんです。
お婆ちゃんの家に入れて、奥の家に入れて戻ってくると新聞が無いんですよね。

だからお婆ちゃんの頭の中で、自分が配達に来る時間を大体覚えていて、
自分が奥の家に置きに行っている間にお婆ちゃんが新聞を取るんだろうなと思っていたんです。

それである時に初めて自分がお婆ちゃんの家に集金に行ったんですよね。
お婆ちゃんの家に行くと、お婆ちゃんが
「いつも枕元まで届けてくれてありがとう」と、
そう言ったらしいんです。

「いやいやお婆ちゃん何言っているんですか。
 自分は新聞受けに入れているだけで、枕元までは行ってないですよ」

「いやいや、いつも枕元まで持ってきてもらっているから、
 本当に助かっているの。ありがとうね」
そうお婆ちゃんは言うんだそうです。

それでその友達がその話を僕にしてきた。

「お婆ちゃんこんなこと言うんだよね」
「いや、それはお婆ちゃんがぼけているか勘違いしているかで、
 絶対お婆ちゃんが新聞取ってるって」
「でもいっつもお婆ちゃんが取るのって、俺が二十メートルくらい先の奥の家に行っている間なんだよなぁ」

そう友達が言うんで、俺も遊び半分で
「じゃあ俺も着いていくわ」
と言ったんです。

それで一軒目のお婆ちゃんの家に投函して、それでしばらく隠れて待っていたんです。
しばらく待っていても新聞は刺さったままで
「何もねぇなぁ」
と二人で話して、奥の家に向かって歩き始めた時に友達が

「ちょっと待って。やっぱり戻ってみよう」
と言うんで、お婆ちゃんの家に戻ったんですよ。

そうすると、さっき投函した新聞がスーッと家の中に入っていってる。
ただおかしいのが、そのすりガラスに人影が無いんです。
新聞だけが引かれていってるんで、友達と僕は近づいていって、友達がその新聞を掴んだんです。

そしたら向こうからグッと引っ張る感触があるんで、お互いに新聞の引っ張り合いになっているんですよ。
そういうのを繰り返していたら、いきなりすりガラスに

バン!

と、フランス人形が張り付いたんです。

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