昼間のエレベーター - タモリ

俺の知ってる奴でもう芸能界を辞めた奴の話なんだけど、
マネージャーが「8時に下に迎えに来るから用意をしておいてくれ」と。

それで8時頃下についたマネージャーから電話がかかってきて「もう下に迎えに来ているから」と。
「あぁ、じゃあもう用意出来ているから、今から行くね」と返した。

その人は十何階に居たんでエレベーターの下のボタンを押して、エレベーターに乗り込んだ。
そうすると途中の階でドアが開き、お婆さんが乗ってきた。
その人はすごく品の良いお婆さんだったんだけど、そのお婆さんに
「何階ですか?」と聞くと、「ううん、二十何階」って言うんです。

でもこのエレベーターは下に向かいますからね、
「あ、お婆さんすみません。このエレベーターもう下に向かってますんで、
 一旦下についてから上に登るんですがそれでもいいですか?」
と聞いたんです。

するとそのお婆さんは
「ううん、これは上に行くから」

「お婆さん、これはもう下に向かってますから」
そう返しながら(このお婆さん何を言ってるんだろう)と思いながらふっと上の数字を見ると
エレベーターが上に向かっていたんですって。

それでお婆さんは「二十七階」と言うんだけども、このマンションは二十六階までしか無い。
(えっ?)と思っていたら、何故かお婆さんが言う階について、何だかそこはものすごく気持ちがいいフロアだったそうです。

お婆さんが降りる時に振り向いて
「良かったらご一緒に降りますか?」
と言う。

でもこれは直感的に降りちゃいけないんだと思ったから
「いや、結構です」
と言うと、エレベーターはスーッと下に降りていった。

一階に降りるとマネージャーが居て
「お前、何分かかってんだよ」
て言うから時計を見ると、十数分以上経っていたんですって。
時間が飛んでいたんだよね。

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