大阪Iトンネル - 中山市朗
だいぶ前の話になりますが、僕の知り合いにフリーライターの人がいたんです。 この人は幽霊とか全く信じていないんですけども、夏になるとローカル紙の方から心霊スポットの取材依頼が来たりするんですって。 それでその時も取材だったんですけど、自分の家からバイクで一時間くらいの山にトンネルがあります。 そこに幽霊が出るという噂をよく耳にすると。 そしたらその人の古い友人もそこで霊体験をしたことがあるって話になったんです。 山道をずっと行くと古いトンネルがあると。 そしてそのトンネルの前に女の人が立っているんです。 そこのトンネルの周りは山道で街灯もなく真っ暗なんです。 そしてトンネルのところだけトンネルの明かりが漏れているんですよ。 真夜中バイクで行くと確かにその女の人が立っているんです。 普通だと気持ち悪いんでしょうけど、よく見るとその女の人はとてもきれいな人だったのでバイクを停めて 「あんた何してるの」 と声をかけると、その女の人が 「実は彼氏とドライブしていて車の中で喧嘩になった。 それで彼氏から車を降りろと言われ、こんな山の中に捨てられてしまった。 彼氏の悪ふざけだろうと思ってしばらく待っていたんだけど戻ってこないので、 明かりはここしかないのでここで立って待っていたんです」 「そうなんだ、それは大変だねぇ。 ところで何処の子?」 そう聞くと近くの町の名前を言ったので、「そしたら乗ってきなよ」と言ってバイクの後ろに乗せたんですって。 そしたらいつの間にかその女の子はいなくなっていたそうなんです。 それを聞いたそのライターの人は、本当かどうかは疑心暗鬼なものの取材先からそういう記事を書いてくれというのもあって、取材がてら行ってみることにしたんです。 夏の日の夜中に一人でバイクを飛ばして行ってみることにしたんです。 道はきちんとした舗装道路なんですけど、確かに街灯は全く無くて、山道だから道も少し曲がっているんですって。 そしたら確かに言われたとおりにトンネルはあって、そこに女の子が立っているんですって。 (ほんまに居るわ)と思ったんですが、その友人の話を聴いていたので、ライターさんはそのトンネルを突っ切っていったんです。 そしてトンネルを抜けたところで(今の女は一体何だったんだろう)と再び思うわけですよ。 バイクの明かりを照らした時に女の子の顔にライトがきちんと当たるということは、それは生きている人間だろうと思い、もう一度行ってみたんです。 きっと自分は幽霊が居ると思っていたから幽霊だと思いこんでいたんだろうと。 自分は幽霊をあまり信じていないし、ライトが当たった時に女の人にきちんと影があるのも見た。 だからあれは生きている人間だろう。 もしあれが人間だったらこの時間にこんなところに居る女の子なら、何か事件に巻き込まれたのかもしれない。 そんなことをあれこれ考えて、多少の怖さはあったもののもう一度Uターンしてトンネルの中に入ったんです。 そしてトンネルの中に入って入り口まで戻ると、やはり女の子は居るんです。 バイクを停めて女の子に話しかけたんです。 そうしたら女の子が「実は私、彼氏とドライブしていて喧嘩してしまって」と、友達から聴いた話と全く同じ話をするんです。 でもどう見ても人間なんです。 性格も無茶苦茶明るくて、「ちょっと聴いてくださいよ」みたいな感じなのでやっぱり普通の女の子だと思ったんです。 「自分は何処の子なの?」と聞くと、女の子は以前友人に言った町とは違う町の名前を言ったのでこれはその話と聴いた女の子とは違う、普通の女の子だと思ったんです。 だから「乗っていきや」と言ってバイクの後ろに乗せたんです。 「ちゃんと掴まっておきなよ」と言って女の子に自分のお腹のあたりを掴ませる。 女の子の感触もあるし、きちんとした体温も感じる。 それを自分の中で確かめて、じゃあ行こうと言って山奥を走り始めたんです。 でもその時走りながら思ったんです。 (これって友達から聴いた噂の話と全く同じだよな)と思った瞬間に、 「そうでしょ」 と女の子が言ったんです。 「えっ!?」と思って後ろを振り返ると、皆が言っていたように女の子は居ないんです。 女の子は居ないんですけど、自分のお腹のあたりにまわされた手はしっかり見えるんです。 手はあるんですよ、でも女の子は居ないんです。 それでうわっと思いながら急いでバイクを走り出していくんですけど、その間中ずっと手はあるんです。 ようやく街に入った頃に手は無くなっていました。 それで僕のところに「今こんなことがあった」と電話をかけてきたんですけど、 「俺幽霊にあったのに、カメラとか持っていったのに何にも撮ってない」と言っていました。 その後実際にキングレコードさんだったりだとか他の関連企業と相談して殴り込みに行ったんです。 そしたらその女の子のことは見なかったんですけど、車の窓ガラスのところにべったり手形がついていました。






