麗しきあなた2

匿名さん  2008/08/20 00:10「怖い話投稿:ホラーテラー」
題名は一緒ですが内容はかなりちがいます。
これは父から聞かされました。

ある恋人達の話です。

僕には愛と言う名の恋人が居た。
彼女は生まれたときから彼女の目に映る全ての物が闇だった。
生まれつき目が不自由だったのだ。
それが理由で小学、中学といじめられてきた。
それを見かねた僕が彼女をかばった。
あの日、いじめっ子達にボコボコにされた記憶は今も覚えている。
だけど、彼女はボロボロになった僕の体を、おぼつかない手つきで手当てをしてくれた。
そして、ありがとう。と言ってくれた。
僕は彼女の笑顔に引かれた。
こうして僕たちの交際が始まった。

高校を卒業して、大学。
僕たちの関係はまだ続いていた。
親の反対を押し切って同棲をし、お互いを支えあい、ひっそりと暮らしていた。
目が不自由だからといって彼女にできないことはほとんどなかった。
点字も読めたし、どこになにがあるかすぐに覚えてしまう、記憶力があるので、僕の助けはまったくと言っていいほど必要なかった。
僕は彼女の生きる力強さに驚嘆させられた。
・・・彼女は僕の生きがいだった。

ある日、彼女が僕に渡したいものがあるといい、僕はなんだろうと思い、それを受け取った。
それは手編みのセーターだった。
そういえば今日は僕の誕生日だったのだ。
とても何も見えていないとは思えないくらいいいできで。
サイズも僕にぴったりだった。
僕は彼女の健気さと僕を思ってくれている気持ちに感動させられ涙した。
そして誓った。
彼女の誕生日に指輪をわたそうと。

そんな幸せな日々が続いていたある日だった。
彼女はちょっと買い物に言ってくるといい家をでた。
僕も一緒に行くよといったが、大丈夫だと言って彼女は一人で出かけてしまった。
・・・しかし彼女は何分たっても何十分たっても帰ってこなかった。
心配になった僕が探しに行こうとしたとき、ジリリリリーと電話が鳴った。
僕は受話器を持ち上げ向こう相手の話に耳を傾けた。

僕はドアを開けっぱなしにしたまま家を飛び出した。
・・・愛が事故にあった。
歩道橋を降りているとき後ろから走ってきた子供と衝突し、ころげ落ちてしまったそうだ。
今は○○病院に搬送されて危険な状態だと。
僕は不安と悲しみでどうにかなってしまいそうだった。
いそいでタクシーをひろうと、おつりもうけとらないまま、緊急医療室へと向かった。

愛は、愛は大丈夫なんですか!!
医者はつとめて冷静に愛がとても危険な状態であることと、最善をつくすことだけをつげた。僕は待合室にあるいすにすわってただ愛が元気になってくれることを祈った。
愛。愛。たのむ、もう一度、もう一度あの笑顔を見せてくれ。

しばらくすると医者がでてきた。
僕はすがる思いで医者に愛は無事なのかと尋ねた。
・・・しかし、医者は静かに首を横に振るだけだった。
僕は医者を突き飛ばすと、急いで愛のもとへと走った。
周りにいるスタッフ達も自分をとめなかった。

愛の顔はまるで眠っているみたいにきれいなものだった。
ただところどころについた痣をのぞけば。
愛、愛!起きてくれよなあまじでたのむから・・・もう一度なあもう一度笑ってくれよ。
あの誰よりもまぶしい笑顔を俺に向けてくれよ。
なあ返事しろよ、愛、愛、あいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい。
僕の頭の中に愛との思い出が走馬灯のように駆け巡った。
初めて言葉を交わしたあの日のこと、親の反対をおしきって一緒に暮らし始めた日々、愛がくれた誕生日プレゼントのセーター、そして愛との愛との・・・僕は愛のお腹に頭をうずめて何時間も大声で泣いた。
ずっとずっと泣いた。

それからあとは、どうやって帰ったかわからない、気がつけば家にいて、気がつけば愛の葬儀がおわっていた。
僕は、完全に生きる気力を失っていた。

ある日、僕は最終手段にでた。もう愛のいない生活は考えられないし、耐えられなかった。
僕は愛が死んだ歩道橋の上に立った。愛に会えるんだと思うと、不思議と怖くはなかった。
そうして、僕の体は音を立てながら階段を転げ落ちた。
後から救急車のサイレンの音が聞こえてきた。

僕は真っ暗ななにもない場所にいた。
そこでどんどん自分が深い場所に落ちていっていることがわかった。
・・・これで愛に会えるんだっと思った。そのとき僕の頭上から眩い光が差してきた。
同時に人の姿も目に映った。
愛だった。
愛!愛!僕は必死に彼女の名を呼んだ。
愛が近寄ってきたもう間違いなかった。
僕は久しぶりの麗しき人を力強く抱きしめた。抱きしめながら愛は話はじめた。
「私は生まれつきこんな目だから、あなたになにもしてあげられなかった。
○さんより早く死んでしまってとても悲しい思いをさせてごめんなさい。
だからあなたには私のぶんまで生きてほしいの、だからもう死のうなんて考えないで。
お願い生きて。」
そういって愛は僕の体をそっと離した。
僕は愛の体が透けてきていることからもう時間がないことさとった。
「愛これ。うけとってくれるよね。」
僕は消える寸前の愛の手にずっとポケットのままに入れたままだった。
指輪を渡した。愛は少し悲しげな笑みを見せて自分の指に指輪をはめた。
さす光がどんどん強くなっていった。
僕は伝えておきたかった言葉を全てはきだした。
「愛。俺一生懸命生きるから。愛のぶんまで頑張るから。
だからもし俺が愛のそばに行くようになったら、そのときは結婚してくれ。」
愛は黙ってうなずいた。
光がつよさを増してきた。
愛は聞き取れなかったが何かをつぶやいたあおきえていった。

僕が生き返ったのは奇跡に近かったらしい。
かなり危険な状態だったらしく、息を吹き返したときは医者は本当に驚いたそうだ。
結局あれは夢だったのかと思いふと思い出してポケットさぐるとそこに指輪はなかった。



ここまで読んで下さった皆様ありがとうございました。
これは驚くかもしれませんが実話です。
最後にこの話の主人公の方が愛さんへと書いた手紙を読んでみてください。



愛へ

元気にしているでしょうか。
僕は今とある会社に勤めています。
日常は忙しいですがとても充実しています。
あのとき愛が最後に伝えたかった言葉は未だに分かりませんが、僕は愛があいしてるといったように聞こえました。
かってに解釈してごめんね。
愛僕がそちらに行くまでずっと待っててね。
僕も一生懸命生きたあと胸を張って愛のもとに行きます。
それまで、待っていてください。
最後に、愛、僕もずっと、ずっと愛していたよ。

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