南方仮面の間

141 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/03/14(土) 05:28:07.81 ID:m0vMDeTK0.net[1/4]
うちのビルには「南方仮面の間」と言われてる一角がある。 
ビルのオーナーが南方の仮面を集めてるんだ。 
東南アジアとかアフリカとかニューギニアで、部族が儀式で被るような仮面だね。 

そこはビルのオーナーが経営してる会社の事務所前。 
最上階の踊り場に設けられているスペースだ。 
仮面は様々で、ユニークな物もあれば気味が悪い物もある。 
屋上は休憩所なので、ビルの入居者はよく使うんだが、 
行くためには必ず仮面たちの中を通る。 
そういうわけで、この場所はちょっとした名物なわけだ。 

面白い場所だと思ってるか、仮面には無関心か、大半はどちらかだ。 
だが、何となく気味の悪さを感じて敬遠する人もいる。 
自分は後者だ。 
得体の知れない何かがいる様な気配を感じる。 
誰かに見られているような、視線が向けられている様な、そんな感じは行く度にある。 
何度か袖を引っ張られたように感じたこともあった。 
そういうわけで、用がなければ近寄らないようにしていた。

ある晩、自分は残業する羽目になった。 
このビルで働く人は、ほとんどが夕方頃には帰ってしまう。 
夜は一人だけでビルの中に残されるわけだ。 

真夜中のビルは静かだった。 
キーボードの音、表通りを時々通る車の音、換気扇の音、それら以外の音がない。 
廊下も部屋も消灯されて真っ暗だ。 
自分のデスクライト以外には明かりもないだろう。 
何とも寂しい雰囲気の中、一人で黙々と作業をしていた。 

書類を書いている中で、同僚のアドレスを打ち込む場面に出くわした。 
が、覚えていない。 
ケータイのアドレス帳から探そうと思い、ケータイを取ろうとしたが・・・ 
ケータイがいつもの場所にない。どうやらケータイをなくしたらしい。 
最後にケータイを見た場所を思い返してみた。 
・・・そういえば、屋上で昼食を食べた時、アプリを見せ合った。 
ケータイに触ったのはそれが最後だ。 
どうやら、昼食を食べた時に使ったベンチに置き忘れたようだ。 
面倒だが・・・仕事を中断し、屋上までケータイを取りに行くことにした。 

夜はビル全体が消灯している。廊下も階段も真っ暗だ。 
豆電球がついたキーホルダーライトがあったので、それを頼りに階段を進んだ。 
足元を照らしながら慎重に進んだ。

階段を上り、最上階の手前まで来た。 
そのとき、ふと誰かがいる気配を感じた。 
自分のすぐ上・・・南方仮面の間から気配がする。 
真っ暗闇の中だが、確実に誰かがいる。 
ゆっくりと視線を上に移しながら、ライトで照らしてみた。 
すると、そこには誰もいない。 
気のせいだったか? 
そのまま屋上まで上がって行ったが、その途中も気配は感じた。 

屋上でケータイを回収し、階段を下りて行った。 
やはり、帰りも気配を感じた。 
気になったので周囲を照らしたが、誰もいない・・・。 
何気なく、仮面を一つずつ照らしながら、仮面を眺めた。 
夜の暗闇の中でみる木彫りの仮面は、かなり不気味だった。 

ある仮面を照らしたとき、一瞬目を疑ったが、冷汗がどっと出て動けなくなった。 

仮面の目に空けられた二つの穴の中に、二つの目玉があったのだ。 
目玉はこちらをじーーっと眺めている。 
見た目は人間の目玉そのものだ。 
あまりの恐ろしさに声も出なかったし、腰が抜けそうになった。 
こちらと視線を合わせたまま、自分は後ずさりした。 
目を合わせるのは恐ろしかったが、照明と目線は離せなかった。 
暗闇になった途端、向かってくるかもしれないと思ったからだ。 
こちらが動くと、動きに合わせて目玉もゆっくりと動いた。 

下り階段の手前まで来たとき、視線とライトを仮面から外した。 
それと同時に、全速力で階段を駆け下りた。 
途中でこけそうになったが、構わず走って逃げた。 
事務所の中まで戻り、すぐに入り口ドアの鍵をかけた。 
そして、朝まで部屋から一歩も出ずに過ごした・・・ 
一晩中、廊下が気になって仕方なかったが、部屋に戻ってからは大丈夫だった。

後日、オーナーに彼が集めている仮面について聞いてみた。 
信じて貰えなさそうなので、あの晩の事は話さなかったが・・・ 

オーナーは言った。 
飾られている仮面の中には、呪術的な儀式に使う物も結構あるという。 
祖国ではシャーマンや祈祷師が使う場合もあるそうだ。 
祖霊や精霊を召喚する儀式に使ったりするのだとか・・・。 
自分はこの話を聞いて納得した。 
仮面から気配を感じたこと、あの晩に目玉を見たこと、そういった変な話についてだ。 
そんな物を気軽に買ってきて飾るなよ、と思ったが・・・ 

自分が遭遇した怪奇の話をしても、信用しないだろうし、苦笑いするだけで済ませた。 
とりあえず、夜は仮面に絶対近寄らないようにしようと思った。 

こんな機会だから言えるけど、南方の土産物には結構やばい物もある。 
ガチの呪物とか儀式用が混ざっているからだ。 
皆も見かけたときに変な雰囲気を感じたら・・・気を付けたほうが良いかもね。

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