ストーカー男

JHARDさん  2008/05/29 17:58「怖い話投稿:ホラーテラー」
最近耳にした噂がある。
夜12時から12時10分の間にストーカーしてくる男がいるそうだ。その男は若い女性ばかりを狙う、いわゆる変質者。
12時からストーカーされ10分までに誰にも会わなかったら11分に殺されるらしい。
その話を聞いた日、私は友達とカラオケにいた。帰りが遅くなってしまい、あまりにも楽しかったので噂のことを忘れていた。
自分はそんなに可愛くないし、ストーカーなんかに襲われないだろう。
そう思いながら、友達と十字路のところで別れた。
「ばいばーい!今日メールすんねー」
「わかった!ばいばい!」
少し酔っ払いながら帰っていった。
周りに人はいない。車すら走っていない。いつも以上に静かだった。
ふらつきながら歩き、角を曲がった瞬間、だいたい50メートル先のほうに変なものがいた。暗くてわからない。
足がたくさんある?
違う!四つんばいになっている。
それがわかった瞬間、気が飛びそうになった。
「え…」
どんどんこっちへくる。

ベチャッベチャッ…。
ベチャベチャッベチャ…。

逃げたい。でも震えて足が動いてくれない。
近づくにつれて足は震え、ますます動かない。
こっちにこないで!
叫びたかった。
そのとき、自分の後ろを車が通った。金縛りが解かれ、即座に逃げ出す。履いていた靴を片手に、みっともない姿で逃げる。
自分の住むアパートに逃げ、扉を閉め、鍵をかける。
静かな部屋に安心をし、ほっとため息を吐く。

ベチャッベチャッ…。
ベチャッベチャベチャ…。

「え…」
音が聞こえる。
まさか追ってきたのではないだろうな、と扉の穴を覗く。誰もいない。

ベチャッベチャ…。
ベチャベチャベチャッ…。
ベチャッベチャッ…。

外じゃない!家の中だ!
変なうなり声が聞こえる。
「ひいっ!」
男は四つんばいのまま、玄関にいた。どうして家の中に。そんなこと考える間もなく、即座に鍵を開け、外へ飛び出した。
階段を降りながら、自分の家の玄関を見る。男が上半身裸のまま外に出てきていた。
「誰か助けてっ!」
叫んだが、周りに人はいない。
裸足のまま走り続ける。交番へと向かったものの、警察はいない。パトロール中だろうか。
ドアを叩きながら叫んだ。
「助けて!おねがい、助けて!」

ベチャッベチャッ…。
ベチャッベチャッ…。

後ろを振り返ると、男が顔を出す。体を引きずりながら、こちらへとくる。
ドアをたたき、助けを求めた。
「開けてぇ!おねがい、助けて!はやく!」
男が近づき、足をつかもうとしたとき、再び逃げ出した。
次はコンビニのほうへといく。

ピロン、ピロン、ピロン…。

「ひっ!」
目の前に男がいた。
体を引きずり、腰が抜けてしまった彼女の足をつかむ。グッと足首から痛みがはしる。
「いやぁ!離してよ!」
男の腕を振り払い、友達と別れた十字路へと向かう。誰かに会えばいいのだ。そう思いながら、友達の家へ走っていく。
そして思わず足を止めた。
「うそ…」
友達の家の前に男の姿があった。先回りされたのか。男は笑っている。
ふざけんな。
恐怖よりも怒りが芽生えた。手にしていたバッグを握り締め、それをこちらへやってくる男に向かって投げ飛ばした。
「いい加減にしてよ!」
男は笑みながらこちらへくる。
近くに置いてあった植木鉢を投げる。それでも男は追いかけてくる。
「こっちにこないで!」
怒りを隠せず、怒鳴った。

ベチャッベチャッ…。
ベチャッベチャッ…。

壁にあたってしまった。
男は一度「ふっ」と笑う。そして…………。


――…
最近耳にした噂がある。
夜12時から12時10分の間にストーカーしてくる男がいるそうだ。その男は若い女性ばかりを狙う、いわゆる変質者。
12時からストーカーされ10分までに誰にも会わなかったら11分に殺されるらしい。
殺された女性が逃げ回った場所に、その男は現れる。

――…
逃げれば逃げるほど、数が増えるストーカー。

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