目玉

562:三毛猫 1/2:2006/03/03(金) 06:46:50 ID:AFET4tjKO

内の職場(塾)には凄く霊感の強い塾長がいる。私が聞いた中で、結構怖かったものを書いてみる。 
塾長はバイク(ハーレー)好きで、よくツーリングへ行く。 
クマみたいにがたいがよくて、山男ってかんじ。
(実際よく893に間違えられる)バイクで山へ行って、野宿したり温泉に入ったり。そんな趣味がある。 
ある日、山道を越えて温泉へ愛車のハーレーで向かったときのこと。 
日も暮れかけてきて、少し疲れたことだし、坂道の途中で休むことにした。 
火を炊いて、コーヒーを入れていると、視線を感じる。 
普段は気にならないけど、なにやらまずい気がしたらしい。 
コーヒーを捨てて、直ぐ様バイクにまたがり、とにかく宿を探した。 

やっと見つけた宿は、藪のなかにある。 
民宿の様だが、いつもなら絶対に泊まらないだろう。 
ギシギシいう廊下。黴臭い壁。 
まさに廃墟だ。 
お爺さんが一人でやっているらしい。 
塾長はさっきの視線がやはり気になり、野宿よりはましだと、泊まることにした。 

部屋には裸電球と、黴臭くてふよふよになった畳。 
塾長はくたくたで、安心したせいか、布団もひかず、カーテンも閉めず、横になった。 

うとうとしてしまったみたいだ。気付くと何の音もしない、真の闇夜だった。 
裸電球を見上げて気が付いた。 
視線を感じる。 
そうだ。あの坂の。 
あの視線だ。 
体を動かさないようにしたまま、視線をたどった。 
開けたままのカーテンの窓。誰かのぞいていた。 
男…に見えた。 
でも、目玉がない。 
ぽっかりと開いた目玉の穴は、何もかも吸い込むように真っ黒。 
真っ黒がふたぁつ、自分を見つめていた。 

塾長は「目玉がないってあんなに真っ黒なんてなぁ」とちょっと笑って言った。 
その後、トイレへいって、帰ってきたらいなかったので、カーテンを閉めて寝たらしい。 
彼の話はたくさんある。 
彼が洒落にならないと感じた話も。 
でも、恐ろしくて、私にはここに書く勇気がない。いつか、語り尽くしたら…書きたいです。 

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