帰れなくなる

129:小心者の初心者:2007/04/22(日) 08:50:47 ID:uadlivea0

この話は、地元の心霊スポットとして有名なトンネルに行った時の話です。 

そこには遠足や、ちょっとした遠出での寄り道として普通によく通っていました。 
随分前ですが、中学生の頃、遠足でそこを訪れた時、友人3人と並んでそのトンネルを通りました。 
中は薄暗いのですが、そんなに距離もないしいつも通っていると言う事と、 
普通に何人もの人が通っていたので、特別恐くはありませんでした。 

ところがトンネル内の途中で、一人で歩く4~5歳程度の男の子を見つけました。親も居ないみたいだし、つい目で追っていました。 
その子からは嫌な感じはなく・・・寧ろ温かいような懐かしいような感覚がその時したと思います。 
ですが、その時は特に気にせず、そのまま出口に向かいました。 

そろそろ出口付近だと言う所で、今度は白いワンピースを着た髪の長い女性を見かけ、 
この時はなんとなくですが「あぁ、この人は生きてない」そう思ったんです。 
その人は悪寒の塊のような感じがして、体全体が彼女を拒否しているかのようで、ともかく気持ちの悪い人でした。 
と言っても、顔は見えてません。ぱっと見は綺麗そうでした。 
雰囲気が気持ち悪いのです。 

そしてその人を通り越した所で、何故か凄く後ろを振り向きたくなりました。 
背中はゾクゾクと寒気が走っているのに、駄目だと脳が訴えているのに、 
どうしても後ろが気になるのです。 

もう、無理だ・・・ 

そう思い振り向こうとした瞬間、袖を引っ張られるような気がして下を見てみると、 
トンネルの途中で見た男の子がいました。 
とても悲しそうな顔をしてこちらを見ています。 
何で?と思った瞬間、声が頭に響きました。 

「見ちゃ駄目だよ、お姉ちゃん。帰れなくなっちゃうよ」 

僕みたいに・・・。 
そう頭に言葉が響き、聞き終えた瞬間涙が流れてきました。 
何故かはわからないのですが、トンネルからだいぶ離れるまで涙は止まりませんでした。 
涙が止まるまで、背中にはずっと悪寒にも似た寒気が走っていましたが、 
治まるまでその男の子は袖を引いて一緒に歩いていてくれました。 
そう言えば、その男の子は友達や、同じ学校の人達には見えていなかったみたいです。 

同じ班の友達が心配してくれていたのですが、その時の私は泣くばかりで何も言えませんでした。 
寒気が通り過ぎた後、男の子も消えてしまったのですが、 
私はあのトンネルに帰ったんだな・・・そう思いました。 
その後は無事に遠足を終え、バスで帰りました。 
帰りのバスの中で、霊感があると言っていた友達が・・・(私の前の席に座っていたのですが) 

「あの子が助けてくれたんだ、良かったね」 
と急に声をかけ言ってきて、さらに。 
「あの子も一緒に帰らせてあげたかったね、きっともう随分と前からあそこにいるんだよ。
○○(私の名前)みたいな子を、ずっと前から助けてあげているんだろね」 

「・・・・・・誰から?」 

私はなんとなく分かっていましたが、聞いた。 
「あの般若のような顔をした女からだよ・・・連れて行きたかったみたいだよ、あんたの事」 
「・・・えっ・・・!?」 

その言葉を聞いて、私は口を開けて暫し放心状態になっていました。 
霊感の強い彼女にはしっかりと見えていたらしいです。 
般若のような恐ろしい形相の女が、物欲しそうに私を見つめながら、後を追いかけていた姿を・・・ 
暫くしたら諦めたようで、トンネルに帰っていったそうです。 
きっと男の子が消えた時の事だと思います。 

あの男の子が何者何かは分かりません、調べる気もありません。 
ですが、その日以来そのトンネルを通っても、男の子もあの女も見ることが出来ませんでした。 
あの女には出会いたくないですが、男の子だけには、どうしても会いたかったです。 
会ってお礼が言いたかった。 
その時以外、私には霊的出会いは何もありません。 
でももう一度だけ・・・もう一度だけで良いので、あの子に会いたいです・・・。 

怖くないかもしれませんが、私にとっては洒落にならない話しでした。 
最後まで見てくださり、有難うございました。 


 

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