大変な夜

645 本当にあった怖い名無し sage 2013/01/12(土) 02:28:24.38 ID:byaGCcn60

面白い話の後なんでちょっと気が引けるけど、勇気を出して投稿。 
歯を抜いた時の話。 

抜歯後の傷に血餅がみられないため歯槽骨が露出し、傷に強い痛みを伴うドライソケットってのになった。 
昼は車を運転して仕事行かなきゃならないから、あまり強い痛み止の薬も飲めない。 

このドライソケットの痛みってのがハンパじゃない。普通の痛み止なんかは何の役にもたたない。 
仕事なんてできるような状態じゃなかったけど、忙しくて休む事もできなかった。 

歯医者が会社から近かったので、午前中に麻酔の注射を打ってもらってから、また仕事に戻るっていうのが4日位続いたんだ。 
麻酔は午後2時頃からきれ始め、帰宅する頃にはもう全開に近い痛みが襲う。 

2日目から、家に帰って処方された痛み止を飲んで寝ることを考えるただけで、幸せな気分になる、異常な精神状態になってきた。 

処方薬は服用すると、頭がフワフワって感じに軽くなって、酔った時みたいに足元がおぼつかなくなる。 
ぼーっとして、幸せな気分になるんだ。 

そんな日が続いた3日目の夜。 
夢を見ていた。妙に現実感のある夢だった 

夢を見ていた。妙に現実感のある夢だった。 
作業服を着た男が斧で木を切っている。顔は無表情で霧がかかったように少しボヤけて見える。 
音のない世界で、斧が木に当たる音も聞こえない。 
しばらくの間、自分はなんでここにいるのか考えながら、男が斧を振っているのを見ていた。 

男は手を休めるとこっちを見た。 
その時はっきりと男の顔が見えた。 
目も鼻も口も一本の線でできているように見える。 

ー | ー ←こんな感じ 
ー 
ヤバイ、と思った。こっちへ来る。逃げたいけれど、どっちへ行けばいいのわからない。 
後ろを見ると、何もない空間にドアだけが浮いている。 
迷わすそのドアを開けて中に入ったら…自分の部屋だった。 


そこで目が覚めた。怖かったあ、まだ心臓がドキドキしている。 

で、体を起こしてしばらくベッドの上で、恐かったなあって考えていたんだ。 
そしたら、急に金縛りみたいになって動けなくなった。 
横になってる時の金縛りはあったけど、この体制でなると洒落にならない。 

誰かが寝室に入ってくる気配がする。 
さっき夢の中で入って来たドアの鍵をかけていない! 
きっとあの男が来たんだって思ったよ。 

作業服の男は両手で捧げるように"何か"を持っている。 
何故かその男の周りだけが薄暗くてよく見えない。 

男は自分の目の前に来て、その"何か"を渡そうとするんだけど、 
こんなに近くで見ても、それは"何か"としか表現できない。 

金縛りなのに、手が勝手に動いて 
"何か"を受け取った。 
ヌルッと生温かい感触。 
大きさの割には重い。 
強いて言えば、丸大ハムの丸ごとの大きいハムって感じかな。 
そのハムみたいなところに、細くて小さい胎児の手足がついていて、ブンブン振り回している。 
ヌルッと生温かいのは血だ。 

心臓が口から出そうになるってこういうのなんだ。 
どうして欲しいんだよ、こんなもの貰っても困るんだよ。 
これはさっきの夢の続きなんだ。 
覚めろ、覚めろ、覚めろ、 
夢だ、夢だ、夢だ。 
体を動かす事も、声をだす事もできない。 

目を閉じたその時、ベッドに何かが乗った。 
見ると、それはうちの猫だった。 
猫は、背中を丸めてアーチ形になって、尻尾は3倍くらい太くなっている。 
耳を後ろに反って今まで聞いたことがないような、恐ろしい声で男を威嚇している。 

男は、相変わらず無表情だが、何となくビビってる気配がする。 

やれー!そいつを追っ払うんだ! 
男が手を伸ばして、丸大ハムを掴もうとした時、猫が引っ掻いた。 
…と思ったら、男の手をすり抜けてしまった。 

男は、丸大ハムを鷲掴みにしてこちらに背を向けた。 
そして、来た時と同じように両手で捧げるように丸大ハムを持ちかえ、ゆっくりと歩いて出て行った。 

茫然自失。 
暫くそのまま座っていたら、猫が鳴いて我に帰った。 
猫は興奮覚めやらずって感じで、体を舐めまくっている。 
金縛りから解放されたけど、心臓はまだバクバクしていた。 

夢…だよな。そうに決まってる。 

猫が体をスリスリしてきたんで、よくやった、偉いぞって頭を撫でてやったよ。 

時計を見たら、午前2時15分だった。仕事へ行くまでまだ時間はあるし、とりあえずもう一度寝ることにした。 
うちの猫はベッドで寝ないからちょっと心細いけど、きっと何かあれば助けに来るだろう。 
電気はつけたままにした。 

布団を顎のところまで深々とかけて目を閉じた。 
痛み止めが効いているんで、すぐ眠りに落ちた。 

どの位寝てたんだろう?口元に何かが触れる感触でボンヤリと目が覚めた。 

猫が起こしに来たのかな? 
うちの猫は毎朝、目覚ましが鳴る1時間前に起こしに来て、肉球で私の顔を軽くポンポンする。 

目を薄っすらと開けると、顎までかけた布団の所に、触角が動いているのが見えた。 
うわあって声を上げて布団を掴んで振り払い、ベッドから飛び降りた。 
手にはパリっていう嫌な感触が残っている。 
まさか、でもきっとこれも夢だ、そうに決まってる。 
薬の説明書きに、幻覚のような変な夢を見るって書いてあったし。 

それにしたって、確認しないといけない。 
ベッドから少し離れた所に立って耳を澄ませてみた。 

ベッドの下でカサカサ音がする。 
触角をつけた"何か"がそこにいる。 
願いはただひとつ。 
Gではありません様に。バッタだったらいいなあ。この際コオロギでもいいや。 

とにかく、強力殺虫剤を持って構える。 
ベッドの下から茶色い奴が飛んで、本棚と壁の間に入った。 
50%の希望が消えた。 

奴が隠れた所に殺虫剤を噴射すると同時に、奴は飛び出してきた。 
事もあろうに玉砕を覚悟して、神風特攻隊のように自分めがけて飛んで来たんだ。 

殺虫剤を奴に向けて噴射。 
見事に命中して奴はポテッと床に落ちた。 
まだ抵抗をするつもりなのか、床を履いながらこちらに向かって来る。 
殺虫剤を噴射。ビショビショになった奴はとうとう動かなくなった。 

そいつはやっぱりGだった。 
Gは何をしようとしてたんだろう? 
口の中に入ろうとしてたんだろうか? 

げえええー、Gに唇を奪われたあ。 
10回ぐらい歯磨いて、リステリンでブクブクしてシャワーを浴びたよ。 

丸大ハムの恐怖は一気に吹き飛んだ。あれが何だったのかはもうどうでもいい。 
Gの触角を、ここまでそばで見たことがあるやつは少ないはずだ。 
2chの連中にちょっとぐらい自慢したっていいと思った。 

以上です。 

今だにGの恐怖のトラウマ中。 

丸大ハムが何だったのかわからない。 

長文な上、たいした落ちもなくすいませんでした。 

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