禍々しい箱

129 本当にあった怖い名無し sage 2014/03/01(土) 19:45:37.06 ID:UG7s3h6G0

最近、自分は周りと違うんだと確信した。 
あるところに行かなきゃいけないこともわかった。 

が、なんだろな。誰かに聞いてもらいたいんでここに書いていくよ。 
ちょっと長くなるが、読んでくれると嬉しい。 

まず、簡単に自己紹介する。 
俺はもう37であと数ヶ月で38になる。だが多分38になることはないんだと思う。 
もう片腕は動かなくなってる。 

そうだ。 
自己紹介に書いておくが、ヤバそうだと思ったら最後まで読まないほうがいいかもしれない。 
多分、何かしらの影響を受けると思う。 

俺は家は海軍の家系で爺様達はwikipediaや教科書にも載っていて、直接会ったことは当然ないんだが、夢の中によく出てくる。 
厳格な表情と厳しい眼差しで俺を囲むように立ち、ただ俺を見つめているだけだが、 
その瞳の奥は優しくて、俺に力をつけろと言ってるように感じていた。 

そんな家柄なんで、物心つく前から古武道(剣道と合気道、柔術が合わさったようなやつだ)をやらされ、 
夏休みはいつも山奥の神社に預けられ、お経や座禅をやらされてた。 

幼稚園、小学校もカトリックで、校長は親戚のシスターだった。 
そこでも何故か毎週月曜日に聖堂に呼ばれ、ロザリオを数周するまで祈りなさいと言われ、 
天にまします我らの父よ、願わくは皆の尊まれんことをと、祈りをさせられてた。 

それだけでも、今思えばおかしいんだと思うが、何というか感づいてはいたんだが、認めたくなかった。 
気づける要素は沢山あったと思う。 

例えば、小さい頃に雪山で谷に落ちた。 
かなり転がって谷底まで落ちて、雪に完全に埋まる状態まで埋まり、多分上から探しても全く見えないレベルまでだ。 
俺はそこから普通に這い出した。 
周りの人間はびっくりしていたが、両親は冷静だったのを覚えてる。 

また、バイクで峠を攻めて走っていたときに、ブラインドコーナーの内側に人がいて、曲がりきれずに100km以上の速度で山に突っ込んだ。 
バイクは大破して廃車。俺は30m以上も山の斜面を転がりながら登った後、そのまま谷に落ちた。高さは50mくらいかな。 
ツナギとか脊髄パット入れてた訳じゃない。が、無傷だった。 
俺は普通に立ち上がり、谷を登ってバイクのところまで歩いたが、自分の胴くらいはある木が俺の転がったところで2本ほど折れてた。 

もう一つあるのが、その事故は梅雨くらいの時期だったんだが、その折れた木の一つは桜の木で、 
事故から数週間経ってから見に行ったんだが、その時に花が咲いていたんだ。 

他にも、格闘技をやっていた関係で喧嘩では手を出すなと言われてたんで、 
不良に絡まれて集団でボコられた時も痛くもないし無傷だとか、 
まあ他にも色々あるんだが、自己紹介という意味ではもういいな。 


俺はこれらのことを、運がいいとか、子供の頃から信仰に関わったおかげで、カルマの成す業かとかずっと思っていた。 
これだけ聞くと、悪い話じゃないと思うだろ?多分、始まりは生まれた瞬間から始まってるんだが、いい話だけではないんだ。 

俺にはもう両親も一族もみんないないし、たまにすごい高熱を出して寝込むことがあった。 
大好きだった小学校の先生、高校の頃に隣に住んでいた彼女、社会人になったときに、 
同じく恋人を失った過去があって仲良くなって付き合い始めた彼女も、もうこの世にいない。 

7才の時、学校で先生がいきなり心筋梗塞になって他界した。 
その時、先生は20代だった。 
心筋梗塞なんてするような感じではなく、とても明るく元気な先生だった。 

17の時、いつも一緒にいた彼女が行方不明になって、数日後とある大学で見つかった。 
屋上から落ちたんだが遺書は見つからなかったし、その一週間前に友達も一緒にカラオケに行って、そんな素振りもなかった。 

27の時、彼氏を沖縄で失った過去がある彼女は、やはり行方不明になり、 
数日後に彼氏の墓がある丘から見える崖で見つかった。 

37の現在、俺は過去の経験からの恐怖で誰とも親しく接することなく過ごしていた。 
親ともここ数年は連絡もしてなかった。正月明けに連絡が入って、実家が火事になって両親も一緒に住んでいた祖父も祖母も亡くなったと聞いた。 

燃えた実家に行くと、母屋は完全に燃えていて、蔵だけが残されていた。 
そこで蘇ってきた記憶。 
小さい頃、この蔵に勝手に入り、中にある軍刀とかを触って、すごく怒られたことがある。 
他の事では何しても怒られなかったのに。 


中にはいると、また記憶が蘇る。その時あったのは、軍刀の他に、小さな丸い古い骨董品的な鏡、 
そして小さな木の箱と、一番奥に大きな四角い箱があり、鍵が掛かっていて開かなかったことを思い出した。 


暗い蔵を奥に進むと、大きな帆船の模型や、軍刀、日本刀、多分帝国海軍時代の拳銃などがあり、やはり一番奥に箱があった。 
昔は気づかなかったが、禍々しい気配を感じ、胸が急に痛み出した。 

怖くなったが、今更怖がっても仕方ないと、すぐにその気持ちは冷め、少し熱くなった痛みの部分を見てみると、胸の真ん中に青白いアザができていた。 
何というか、鎌倉時代とかそれ以前の時代に書かれた感じの達筆な解読不能な字が浮かんでいた。

そうか。。。 
ここだ。この場所からだ。。 
それをみて悟った。 

昔、沖縄の離島に行ったときにユタのお婆さんに、あなたは沢山連れているね?何ともないかい? 

ええ。少し運が言いように思いますが特に。 

そう。だけど、あまり色々見ないほうがいいよ。あんたは優しすぎて何でも背負えてしまうから、みんな憑いて来てしまう。 
この島もこの海も、悲しい事件があった。 
ゆっくりして何も考えずに過ごしたほうがいい。 
(その島は戦時中に集団自殺があった島だ) 

そう言われたことがある。 

その後、たまに神社や森の側を歩いているときに、ザワッ!と突風が吹いたりした時とかに、 
そのお婆さんの言葉が頭をよぎっていたんだが、その時には色々なことが走馬燈のように思い出された。 

神社の神主さんに言われたこと、 
学校の先生に言われたこと、 
初恋の人に言われたこと、 
シスター達にかけられた言葉、 
祈りをしている最中に聞こえた言葉、 
武術の先生に言われた言葉、 
夢の中に出てくる爺様達が放っている言葉、 
そして、旅をしてる最中とかにふと見上げた大きな木や、 
山、岩とか、小さな社とかの景色。 

それは日本古来からの○○の名前。 
何故か涙が溢れてきた。 

だけど、やはりそれらの気配は決して良いものではなく、相変わらず大きな箱からも禍々しい気配を放っていた。 

俺、これ開けたら死ぬかもな。。 
そう感じたが、もう精神的に限界だったこともあり、俺は箱を開けた。 
鍵は掛かっておらず、鉄で装飾されたすごく重い箱の蓋はギィィィィィと音を立てて開いた。 

開けた瞬間、カビの臭いと生臭い感じの臭いが鼻をつき、その瞬間、胸の痛みが強くなり、息が出来なくなって気を失った。 


目が覚めたのは、日が暮れてからだった。 
蔵に入ったには午前中で、目が覚めたのは夜中2時を回っていたので、十数時間気を失っていたことになる。 
と思ったが、日付が4日も過ぎていた。 

夜中でスマフォ以外の明かりはない暗闇の中で、何故か周囲が研ぎ澄ますように見えた。 
そして、暗闇の中で、灰色の霧のようなもので形が作られたような人のようなものや、変な生き物の姿も無数に見えるようになっていた。 

戦国時代の甲冑を着けていて首のないような人や、神社の祈祷師のような姿をした女の人や、蔵の隅の床に這いつくばった人、 
天井にしがみついてる人のような生き物や、猪と牛を足したような生き物、色々なものが見えた。 

それらは、声を発していないが胸の奥から唸るような声が聞こえ、しばらく動くことができなかった。 

箱の中には、札が沢山貼られており、箱の中にも札の貼ってある小さな木箱があり、その中には小さな丸いあの鏡があった。 
その他にも、豪華な袋に入っている脇差?と思ったが、黒い漆塗りの横笛や、その他にも、8つの大きな玉が付いた数珠のようなもの、 
鉄で作られたなんて言えばいいんだ。先端に丸い装飾のある短い杖があり、 
箱の蓋の内側に曼荼羅のような八角形の陣のような羅経が貼られていた。 

しばらくして動けるようになり、見えるようになったものも、箱に入っていたものも、それらは全て禍々しい気配を放っているが、 
自分には害を成さないものだという気がし、一先ず夜が明けるまで蔵で過ごすことにした。 
短い杖のようなものを調べていたが、気がつくと見えていた霧のようなものは消えていたので、そのまま膝を抱えて目を閉じた。 

すまない。発作が起きた。 
そう、その日以来、定期的に"発作"に悩まされてる。 
短い時は1日に数回、長い時は10日くらいに繰り返される。 
そのおかげで左腕はどす黒く変色してもう動かない。 

その夜、目を閉じてからも暫くは、長い間気を失っていたこともあり、眠れずに起きていた。 
姿は見えなくなったものの、周囲には色々な気配を感じた。 
悪い気配には違いないが、何故か自分に危害が加わるような心配がなかった。 
が、たまに風が吹き込んだり、唸り声のようなものが聞こえたときに、少し身構えないとと感じることがあった。 

それは、古武道での立会いや組手の時に、師範相手にした時とかに感じる力のような感じだ。 
つまり近くに感じる気配は、きっと自分に危害を加えるほどの力は持っていない何かで、たまに外を通りすがる何かは、少し力を持っているような感じなんだろうなどと考えていた。 

少しすると雨が降り出し、蔵の中のカビと生臭いような匂いが強くなってきた。 

雨音が強くなってきて、周りの気配を察するのが難しくなり、雨音のおかげで少し眠りに引き込まれていった。 
その時、太鼓のような音が遠くから聞こえてきた気がした。 
ドンドンドン・・・。 
和太鼓の音がリズムもなくドンドンドン・・・と段々近づいてくる感じだ。 

禍々しいだけではなく、とても嫌な感じがして、動こうとしたが体が竦むような感じで力が入らず動けない。 
そうこうしてる間に、太鼓の音が確実に近くなり、笛の音や低い不気味な唸り声が聞こえてきた。 
ヴヴウ・・・ハァアア・・・。 
ヴグウウ・・・ハァアア"ア"ア" 
異臭も強くなり、蔵の入口がどんどんと暗闇に包まれていった。 

ぴしゃり・・・、ぴしゃり・・・。 
太鼓や笛の音も聞こえるので、沢山いそうな感じがするんだが、感じられる気配は一つだけで、足音も一つ。 
ゴオオオオオ!と突風が吹いたと思った時、そいつが蔵の入口に見えた。 

さっきまで霧のように見えてた奴らと違い、はっきりとしている姿があるが、そいつの周囲を暗闇と霧が覆っているような感じでよく見ることができないんだが、
今まで見たことがないような冷たくて憎しみに満ちたような目で俺のことを見ている。 

ヴィグウウウウ!! ハァアア"ア"ア"!!! 
唸り声も心の中だけではなく、耳でもはっきりと聞こえる。 


こいつはヤバい・・・。 
その時、また突風が吹いたかと思うと、そいつを覆っている霧と闇が荒れ狂うように動いた。 
ゴオオオオオオオ 

その瞬間、そいつは俺の目の前まで一瞬で来たかと思うと俺を覗き込むように、顔を近づけてきた。
段々とそいつの顔が見えてくる・・・。 

!!! 

知ってる顔だ・・・。 
目が変わりすぎていて解らなかったが、そいつは紛れもなく火事で死んだはずの祖母だった。 

英語が堪能で全て白髪で、いつも優しく笑顔を振りまき、会うといつもお茶でも飲まない?と言っていた 
日本人ではなく西洋人のような雰囲気の祖母が、変わり果てた姿で俺を冷たい眼差しで見つめ、 
首を左右に振りながらニタニタ笑っている。 
表現しようのない形相で見ているだけで汗が出て涙が出てくる感じだ。 

ヴググ.... ヴググ.... ヴググ.... 
ゴオオオオオ!! 

また突風が吹いた瞬間、祖母は俺の首を掴み、俺は壁に叩きつけられ、軽々と持ち上げられた。 
俺は身長184cmで祖母は150cmに満たないはず・・・。 
だが、すごい力で身動きが取れない。 

首も物凄い力で締め上げられている感じで、もう指が首に刺さっているような感じさえするほどだった。 
さらにそいつを取り巻いている霧と闇のようなものが、俺にも纏わりついてくる。 

ヴヴウ・・・ハァアア・・・。 
ヴグウウ・・・ハァアア"ア"ア" 


力はどんどん強くなっていく感じで、憎しみに満ちた目で俺を凝視して唸り声を上げている。 

ダメだ・・・。 



と思った瞬間、グアアア”ア"ア"ア!!!! 
祖母が叫んだかと思うと手が離れた。 

目を上げると、さっきまで見えていた灰色の霧のような首のない奴が、刀のようなもので祖母を刺している。 
が、祖母は相変わらずニタニタ笑っているような顔で、その首の奴を掴んで押さえ込み始めたかと思うと、首の辺りを齧り始め、祖母を覆う霧と闇がそいつにも覆いかぶさっていく。 
すると、その灰色のような奴が霧から徐々に姿が霧から具現化されいき、落武者のような姿が現れてきた。 

やがて落武者の姿がはっきりするようになると、血も見えるようになった時くらいになると、落武者は力尽きたかのように倒れ、血塗れになった祖母はこちらを向いてこう言った。 

お前も食わせろ・・・ 

また来る!そう思った瞬間に、後ずさった時、手に何かが当たった。 
あの鉄の杖だった。 

杖を手に取り、立ち上がり構えた瞬間、杖の先についている鉄の輪がガシャーンと音を響かせた。 
その瞬間、祖母は少し後ずさり、唸り声を上げながら低く構えた。 

この杖は・・・。 
そうか、よく駅で見かけるお坊さんが持っている錫杖のようなものだと思い、胸の前で構えて色々なお経を唱えた。 

昔、習ったことがある。 
まずは胸の中に神様や仏様を降臨させ、日本古来からの5徳を持って相対する。 

私を守りし神よ力を貸したまえ! 
そして、生前の祖母の5徳を思い出しながら、お経を唱え、思い出す度に錫杖を振り、音を鳴らした。
祖母は次第に蹲っていったので、俺は少しづつ近づいていき、隣まで来た時には、元に戻って欲しいという願いを込めながら祖母を錫杖で打った。 

うああ... うあああああ.... 

祖母を取り囲んでいた闇と霧が薄くなり始めたが構わず続けてた。 

思いきり念じた。 

あなたはいつもにこやかに微笑み、癒しを与え、何をした時も必ず味方でいてくれた。 
迷った時、落ちている時にも、微笑みながらも力強く、あなたは大丈夫よ。正しいと思う事をしなさい。と励ましてくれた。 
智に溢れ、色々な事を知っている家族随一の頭を持っているのに、いつでも誰にでも敬語で接してくれていた。 
財布からお金を取った時でも、困ってる事があったらきちんと相談しなさい。と俺の事を叱らずに撫でてくれた。 

生前の祖母を思い出しながら、涙を流しながら続けた。 

あ"あ"あ"あ"ああああああ!!! 

祖母が顔を上げ、天を見た瞬間、額の辺りに手を置いて念じた。 
俺は大丈夫だから、成仏して。またあっちで会おう。 

その瞬間、祖母の憎しみに満ちた目が和んだかと思うと、姿が消えた。 
声が聞こえた。 

ありがとう。そしてごめんなさいね。 
でも、本当に強くなって・・・。 
○○はね(私の名前だ)、魅入れられてしまってるの。 
だから・・・。 
○○さんのところに行き・・さい。 
すぐにここから逃げ・・・。 

声はそこで消えてしまった。 

魅入られてる?何に? 
っていうか、なんなんだよ・・・。 
と、横を見るとまだあの落ち武者が倒れている。 
しかも、あの祖母の周りにあった霧と闇が薄くだが纏っている。 

ここにいるとダメだ。 

俺は箱の中にあったものを持って蔵を出た。 

ウグググ・・・。 
後ろから唸り声が。 
振り向くと落武者が祖母と同じように闇霧を纏って立ち上がろうとしている。 
気配も祖母よりも強力で、さらに禍々しい気を漂わせ初めていた。 

今はダメだ。勝てない。 
この落武者が何なのかも知らないしどうしようもない。 

全力で走って車に乗り、その場所を後にした。 

車を運転しながら考えた。 
とりあえず、俺はとんでもない何かのせいでおかしいという事。 
今まで起きた事件は全てそいつのせいだという事。 
だが、俺を殺そうとしているわけではない? 
絶対に怪我をしそうな事故が起きても無傷なのは何故だ? 

祖母は○○さんと言っていた。 
その人は、富士山に近くにある山奥で暮らしている本を書いている先生で、神社や寺ではないが、小さい頃に預けられて、座禅や滝業をしたりお経を教えてくれた人だ。 
なんで知ってるのに教えてくれなかったんだ? 

それにあの落武者、、初めは敵ではなかった。 
なぜ祖母と同じように? 

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