「コンデンサがしかけてあるから」

551 :本当にあった怖い名無し :04/11/18 04:23:21 ID:qxui2YKc

「中にコンデンサが仕掛けてあるから」 
友達は自慢げにそう言った。中学二年の夏休み、僕らがまだ 
パソコンや携帯電話を持ってなかったころ、触れるおもちゃは 
オーディオやファミコン、ビデオデッキだった。 
ある日、友達がラジカセのマイクで遊んでいた。 
マイクの先を耳に当てコードを持って電波を拾うかのように、 
天井向けてかざしていた。「ほれ、聴いてみ」 
友人はマイクの先を僕に向けた。耳を当てると、どこかのラジオ放送局の 
声が聴こえてきた。当時の僕は大いに不思議がって、何でどこにも 
つなげていないマイクから、ラジオの声が聞こえてくるのか興味を持った。 
僕は面白がって、マイクを持ってベランダに出たり玄関へ移動したりした。 
つい最近になって、押入れから当時のマイクが出てきた。 
懐かしくて耳にあてる。 
何にも聴こえない。2~3分やっていると、なぜかボソボソ・・・っと 
話し声が聴こえる。さらに注意深く耳をすますと 
「コンデンサがしかけてあるから」と、はっきり聴こえた。 
それは十年以上前の、中二の夏、この部屋で聴いた友人の声だった。 
気味悪くなって、また押入れになおした。 
それからしばらく後、その友人と再会する機会があった。 
あいかわらず、自慢げに語る口調はそのままに、懐かしい昔の 
しかし今はすっかり大人になった友人がいた。 
よくこういうことして遊んだ・・・って話を繰り返し、僕らはわかれた。 
マイクの声のことには触れなかったが、一瞬よみがえったあの声で 
僕は中学当時の情熱や、みなぎっていた力を思い出した。 
最近、仕事のことや私生活のことでマイっていたから余計に昔の自分に 
心の中で会いたがっていたのかもしれない。 
こういう話を会社の同僚にしたら、「おかしい」って眉をひそめる。 
同僚の話では、どこにもつないでいないマイクからラジオの声が 
聴こえるということ自体、めずらしいんじゃないかと言う。 
他の人に聞くと、ごくまれにラジオの電波を構造的に拾いやすくなっている 
ものはけっこうあるそうだ。なんにせよ、あの不思議な声はマイクを通じ 
僕の耳に飛び込んだのだ。

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