数学的可能性

194 :ちょっと変 :04/02/24 00:31

数学的可能性について話していた。 
同じ姓名で同い年、顔、声、性格が似ている人物が 
同じ会社で働く確率とか、駅で「おとうさん」と女性が叫ぶと 
ラッシュアワーでもみくちゃになった人たちのうち、何人が 
振り返るか・・・とか。 
地域やその場所の人数をわりだしたり、それを数式で表そうとすると 
とてもややこしいので、僕達はひたすら話だけに興じた。 
酒のつまみを買出しに行こうと、僕達はコンビニへ行った。 
スルメやマヨネーズなんとかを買って、水割りの氷を他で買い 
僕のマンションへ戻る途中。 
友人が言った。 
「今、俺等がお前のマンションへ帰ろうとしてるわな?そいでさ 
留守であるお前の部屋の前に、今誰かがいるわけよ」 
「怖い事言うな」 
「いや幽霊じゃなくてさ、誰かがいるわけよ。誰かが」 
「うん、誰かがナ」 
「その誰かがさ、お前がいないので、あきらめて帰ろうとするわな」 
「帰ろうとするんだな」 
「その人が俺等とマンションの前でバッタリはちあわせすると言う可能性」 
「低いな」 
そこまでの会話が、曲がり道から突っ込んできた自転車によって途切れた。 
「あぶないなあ」 
「ごめんなさいぐらい言えよなあ」 
自転車は、ぶつかりそうになった僕達に目もくれず、猛スピードで 
遠ざかって行った。 
マンションの前に付くと、なぜか友人が立ち止まった。 
どうしたのかと聞くと、僕の名前を呼ぶ女性の声が前(マンション入り口) 
から聴こえたらしい。

「またまた~」と冗談はよせよっぽく誤魔化したが、今思うと 
僕もその場所で、友人が立ち止まるのとほぼ同時に違和感を感じていた。 
エレベーターに乗り、その中で自転車野郎に憤慨しながらも 
話は続いた。「幽霊が名前を呼んだ可能性」 
「違うってだから」 
「これはやばいっていう確率」 
部屋に戻ると、僕達は更に怖い系を加味して語り合った。 
「か細い声だったような、気のせいだったような」 
「近所のガキだよきっと」 
「お前をうらんで死んだ女の霊だ」 
「そんな奴はおらん」 
心霊ドラマの話題になった。よくドラマでは絶好のタイミングで 
電話が鳴ったりする。電話をかけてきた相手が誰であれ、恐れおののいて 
いる主人公の家の電話が鳴る可能性。 
「可能性は高いと思うなあ」 
「低いよ、普通」 
「家にいると、結構かかってくるよ。携帯も」 
「セールスばっか」 
そこで友人が提案した。今から一時間以内に、知り合いから 
電話が掛かって来ると、心霊ドラマのパターンは嘘じゃない。 
そう言って、まさに友人が電話を指差したその時、 
電話が鳴った。

電話に出ると、僕が付き合っている女性からだった。 
「さっき、おれのマンションに来た?」 
「行ってないよ」 
しばらくして、彼女が来た。マンションの入り口で 
男性の声を聴いたらしい。名前を呼ぶ声でなく、低い声で 
二秒ぐらい「あーーーーーーー」と、気の抜けた感じで。 
幽霊とか、呪いとか、そういう雰囲気じゃなく、ごくあたりまえに。 
一週間か、十日ほど?たったころ、旅行先の彼女から電話があった。 
夢をみたらしい。 
僕と友人があまりに仲が良いので、ちょっと嫉妬した彼女が 
自転車で道を歩く僕と友人にぶつかる。 
マンションへ先回りをし、僕の名前を呼ぶ。 
ぞっとして、僕は可能性が好きな友人に電話をかけた。 
「なあ、これって生霊とかそういうんじゃねーの?」 
「あーーーーーーー」 
そういう話は興味が無いらしく、僕等は話もそこそこに 
携帯を切った。僕は彼女の聴いた「あーーーーーーー」を 
即座に思い出した。 
おわり

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